セイコーマートがPB商品を北海道外でも売る訳 ワインやアイスなど「巣ごもり」で支持を高めた

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ちなみに、同社の酒類とアイスの売れ行きベスト5は、別表のようになっている。

(外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

小売りから「総合型」に脱皮するワケ

「セイコーマート」は北海道民のインフラ的存在だ。道内に1078店あり、179市町村のうち175市町村に出店している。本州には、茨城県(82店)と埼玉県(10店)にある(いずれも2020年7月末現在)が、現在、道外に新規出店する計画はない。

それに代わって、積極的に本州に展開するのが「セコマ」(製造業)であり、酒類に代表される卸・流通業なのだ。いわば川上と川下をつなぐ「総合型」への進化を図る。

「札幌冬季五輪の前年である1971年に創業した当社は北海道に育てられた」と話す同社は、今回紹介した「地産地消」や「過疎地域への出店」にも道内愛が感じられる。

だが同社が直面する課題は、北海道経済の縮小だ。道内の人口は北海道拓殖銀行の倒産の翌年にあたる1998年から減少を続け、景気のよい話は聞こえてこない。そうなると経営視点では、道内に密着した小売業に続く「事業の柱」の育成が急務なのだ。

「セコマグループは『原料生産・製造』『物流・サービス』『小売り』が一貫したサプライチェーンモデルを構築しています。この仕組みを活かし、メーカーとしての販売にも力を入れるのです。これらの事業をコンビニ事業と並列に置き、新たな開拓をしながら会社の柱とするため、グループの連携に注力しています。その象徴が外販事業です」(佐々木氏)

かつて大手食品メーカーの経営者から「食の宝庫である北海道にも拠点を持つ当社として、もっと道産食品を開拓していきたい」と展望を聞いた。その成功例といえよう。

だが油断は禁物だ。われわれはコロナ禍で、それまでの優良事業が一瞬で凋落することも学んだ。セイコーマートは「北海道」を強みに、倒れにくい「太い柱」の育成を続ける。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。

 

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