老いが怖い人は「老いなき世界」を知らない 120歳まで若く健康なままで生きられる方法

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人類には何ができて何ができないのか。その線を引き直し、避けて通れないと信じられていたものに終止符を打つときがきた。

いやむしろ、人間とは何かを定義し直すときだというべきかもしれない。なぜなら、これは1つの革命(レボリューション)の幕開けであるだけでなく、新たな進化(エボリューション)の始まりでもあるのだから。

生命の「サバイバル回路」を働かせよ

毎朝目覚めると、私の受信メールボックスは世界中から届いたメッセージでいっぱいになっている。「何を飲んだらいいですか?」「臨床試験の被験者になるにはどうすればいいか教えてください」。

確かに、誰であろうと、どこに住んでいようと、何歳であろうと、どれだけの収入があろうと関係なく、自分の長寿遺伝子を今すぐにでも働かせる方法はある。

私は約25年にわたって老化を研究し、何千本という科学論文を読んできた。そんな私からのアドバイスの一つは、「食事の量や回数を減らせ」である。長く健康を保ち、寿命を最大限に延ばしたいなら、それが今すぐ実行できて、しかも確実な方法だ。

動物実験によると、長寿のカギを握るサーチュインのプログラムを働かせるカギは、カロリー制限を通して体を「ぎりぎりの状態」に保つことのようだ。つまり、体の健康な機能を保てるくらいの食物は与えながらも、けっしてそれ以上にはしないということである。

これは理にかなっている。そうすれば生命に備わっているサバイバル回路が始動し、原初の昔から行ってきた仕事をせよと長寿遺伝子に命じることができるからだ。

つまり、細胞の防御機能を高め、環境が厳しいときにも生命を維持し、病気や体の劣化を防ぎ、エピゲノムの変化を最小限に留め、老化を遅らせるのである。

だが、カロリー制限にこだわる必要はない。わざわざつらく苦しい思いをしなくても、カロリー制限をしたのと同じメリットは別の方法でもかなり手に入るのだ。

食物が足りないときの遺伝子の反応を確実に再現することができれば、なにものべつまくなしに腹をすかせていなくてもいい。

そこで注目されているのが「間欠的断食」だ。これは、食事の量は普段と変えないものの、食事を抜く期間を周期的に差し挟むというものである。

短期的な研究からは期待のもてる結果が出ており、長期的な研究でも同じだろうと思う。とりあえず、栄養失調にならない程度の間欠的断食法であれば、たいていは長寿遺伝子を働かせることにつながる。そして、長く健康な生涯をもたらしてくれるといってよさそうだ。

食べる量を制限してサバイバル回路を働かせる以外にも、まだまだできることはたくさんある。

デビッド・A・シンクレア ハーバード大学医学大学院教授

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David A. Sinclair

世界的に有名な科学者、起業家。老化の原因と若返りの方法に関する研究で知られる。ハーバード大学医学大学院で、遺伝学の教授として終身在職権を得ており、同大学院のブラヴァトニク研究所に所属している。ほかにも、ハーバード大学ポール・F・グレン老化生物学研究センターの共同所長、ニューサウスウェールズ大学の兼任教授および老化研究室責任者、ならびにシドニー大学名誉教授を務める。『タイム』誌による「世界で最も影響力のある100人」の1人に選出され(2014年)、「医療におけるトップ50人」の1人にも選出されている(2018年)。(写真:アフロ)

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マシュー・D・ラプラント ジャーナリスト、作家

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Matthew D. LaPlante

ユタ州立大学で報道記事ライティングを専門とする準教授。ジャーナリスト、ラジオ番組司会者、作家、共著者としても活躍。

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