街歩きから見えてきた「住宅業界」苦境の真因 消費者の選別化はより一層進む状況になる

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共通するのは複数棟からなる狭小3階建てであること。もちろん、庭はなく1階が車庫など、いわゆる「ミニ戸建て」と呼ばれるもので、住宅密集地である川口市中心部で新規販売されているのはほとんどがこのタイプだ。

立て看板の中には値引きをアピールするものも見られる(写真:筆者撮影)

中には、「300万円値下げしました」などと物件の前に表示されているものもあったが、分譲戸建て住宅を数多く販売しているハウスメーカーの関係者によると、値下げによる販促活動はこの分野ではよくあることという。

ただ、少なくとも筆者の居住地周辺、川口市でもJRの川口駅や西川口駅、埼玉高速鉄道の川口元郷駅に近いエリアではこれまであまり見られなかったことだ。

以前と変わったことはほかにもある。「分譲中」とか「いつでも見学できます」などと書かれた表示物を見かける機会が増えたことだ。電柱の立て看板のほかに、カラーコーンに取り付けられたものもある。

これらは自治体の条例で設置を禁止されていることが多く、あまり好ましい商行為ではない。いずれにせよ、販売状況が芳しくないことから、事業者が販売に必死になっていることが、そこから見えてくる。

高まる在庫増加の懸念

一方で、次々に新たな施工現場が生まれていることも確認しており、分譲戸建ての場合、在庫となる物件が増えるのではないかと危惧している。中でもミニ分譲はもともと、中小規模の事業者による競争が激しい分野で、とくにその懸念が強い。

そもそも分譲戸建ては注文と比べて収益性が低いのが普通だ。ミニ分譲の場合はなおさらで、それは土地をこれまで細分化して建物を建て販売していることからもわかるだろう。販売が滞ると販売在庫が積み上がり、彼らの経営は圧迫されるに違いない。

以上はあくまで筆者が個人的に、しかも川口市内の様子を中心にチェックして考察したものだ。そのため、これが分譲戸建て市場全体に共通する出来事であると主張するつもりは毛頭ない。

では、新型コロナショック以降、全国的な分譲戸建て住宅の状況がどのように推移しているのか、大きな方向性が確認できる、ある企業の業績情報が開示されたので紹介する。

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