HER-SYSは、5月29日から、都道府県、保健所、医療機関で利用開始されています。しかし、既存システムからの移行や自治体ごとの個人情報保護条例の手続きに時間がかかり、本格運用はなかなか進みませんでした。
7月3日時点では、保健所を設置する155自治体のうち、43自治体(28%)がHER―SYSを利用していませんでした。
しかも、驚いたことに、感染者が多い東京都や大阪府で利用が進んでいなかったのです。
8月3日時点では、導入が完了していないのは東京・港区、世田谷区の2自治体のみになりました。
ただし、情報を入力する各医療機関がどこまでHER―SYSに移行しているかどうかは、不明です。
医療機関から保健所、保健所から都道府県への報告は、依然としてファクスで行われている場合が多いと言われます。大半の自治体では、医療機関からファクスで患者の報告を受けた後、保健所がHER―SYSへの入力を代行しており、保健所の業務軽減につながっていないとも言われます。
ところで、COCOAの処理番号は、HER-SYSが発行するのです。それが以上のような状況では、陽性者と接触していても、COCOAで迅速にその事実を知ることはできないことになります。
実際、接触から通知までには1~2週間の時間差が生じることがあるといわれます。
これでは、情報を受け取るのが遅すぎて、役に立たないのではないでしょうか?
検査できない人が8割も!
問題は、以上にとどまりません。実は、もっと深刻な問題があります。
先に述べたように、アプリをインストールするインセンティブを人々に与える必要があります。
当初、「COCOAから接触通知を受けた場合には、専門外来で受診するよう案内される」とされていたので、多くの人は、「保険で検査が受けられる」と考えたと思います。私もそう解釈しました。
ところが、8月23日の日本経済新聞によると、COCOAで通知を受けた人の8割は、検査を受けられなかったというのです(接触アプリ通知来ても「検査受けられず」8割 本社調査)。
「通知は来たけれど検査は受けられない」というのでは、不安を煽られるだけでしかないことになります。
「6割の国民が接触感染アプリを利用すれば大きな効果がある」とされていました。この推計は、検査態勢についてどのような仮定を置いてのものなのでしょうか?政府は明らかにすべきです。
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