人間が地球上で生物界の頂点に君臨している訳 私たちの身体には6段階の進化が刻まれている

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実際に掘ってみよう! ひょっとしたら、さらに有望なのは木星の衛星であるエウロパの、氷に覆われた海かもしれない。エウロパには表面に深い亀裂があって、そこから海にたどり着ける。氷を掘削して海水を調べてみよう。これと同じくらい大規模な技術的快挙が近年達成された。南極大陸の厚い氷床を掘削し、その下にある氷底湖、ボストーク湖の何千万年前もの水に到達したのだ。その結果、驚くほど多種多様な生物が生息していることがわかり、今後の生物学的研究が待たれている。

もう1つの有力候補は、土星の衛星エンケラドスだ。エンケラドスでは高温の泡が絶え間なく噴き出していて、その周囲に液体がたまっている可能性が高い。液体はすぐに蒸発してエンケラドスが土星の周囲に作る環に加わるが、(ひょっとしたら!)その前にわずかな間だけ水たまりができる可能性がある。その中に……。

人工生物の創造も、太陽系以外での地球外生命の発見も、実現すれば非常に衝撃的で、科学的進歩の可能性も広範囲に及ぶ。それぞれ地球における進化の第7、および第8の主要段階と位置付けられるだろう。

生物の「協力」行動はいつ生まれたか

一方、進化における第2の大規模な進展は、細菌レベルの細胞が、はるかに複雑な真核細胞へと変貌を遂げたことだ。人体のさまざまな部分は真核細胞でできている。真核細胞に進化したのはおよそ15億年前のことで、ミトコンドリア、核膜、リボソームといったオルガネラ(細胞小器官)が、ある細胞が何らかの細胞を取り込むことで主に獲得された。

細胞小器官が組み合わさって、個々の細胞内ではるかに効果的な分業が発生したのである。これによって、さらに大きく複雑な器官が進化するお膳立てが整った。第3の進歩、すなわち性の発生――細胞間でのDNAの制御された定期的なやりとり――は環境への適応をはるかに多様化させた。それに応じて進化も加速することになる。

第4段階は、複数の真核細胞が集まった多細胞生物が生まれたことだ。個々の細胞内の細胞小器官と並行して、しっかり連結し、組織された細胞の集まりでできている生物は、機能を特化した器官の誕生を可能にした。それによって生き物の大きさと形の範囲ははるかに拡大したのである。これまでに確認された最古の化石から、多細胞生物はすべての動物の種の祖先を含めて、遅くとも6億年前には誕生したと考えられる。

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