人間が地球上で生物界の頂点に君臨している訳 私たちの身体には6段階の進化が刻まれている

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第5段階は、同じ種の個々の生物の集団化である。この新たな段階のクライマックスが、「真社会性eusociality」を持つ集団の出現だ。真社会性を持つ集団とは、ほかの個体に比べて繁殖能力の劣る一部のスペシャリストを有し、高度な協力と分業システムを持つ集団をいう。言い換えれば、真社会性を持つ種は利他主義を実践しているわけだ。

すでにわかっているものでは、真社会性を持つコロニーのなかで最も古いものは、今から1億4000万から1億1000万年前の白亜紀前期に発生した。最初の種はシロアリで、そのおよそ5000万年後にはアリが真社会性を獲得し、その後は両者が――シロアリは枯れた植物を、アリはシロアリなどの小型の獲物をエサにして――昆虫界の生態系で優位に立った。アフリカで誕生した現生人類の祖先については、遅くとも200万年前には――ホモ・ハビリスが――真社会性を獲得していた可能性が高い。

相互作用の1つが血縁選択

集団内の個体同士の協力は、さまざまな形態の相互作用によって発生し、進化すると考えられる。そうした相互作用の1つが血縁選択で、血縁選択においてはある個体の行動が直系子孫以外の近縁者の生存と繁殖に有利に働く。(いとこ同士よりもきょうだい同士など)近い血縁者ほど影響は大きい。たとえ利他的行動をする個体が不利になっても、その個体が共通の血統によって血縁者と共有する遺伝子は有利になる。

たとえば、ほとんどの人間が命や財産をなげうってでも救おうとする可能性が高いのは、みいとこ(親のはとこの子ども)ではなく、きょうだいだろう。直感的に見れば血縁選択は集団内の身内びいきを強める気がするが、集団の発生にひと役買う場合もある。

個体同士の協力行動を発生しやすくする可能性がある2つ目の相互作用は、直接互恵性、つまり個体間の取引だ。ワタリガラス、ベルベットモンキー、チンパンジーなど多くの動物は、1匹の個体が新たにエサを発見すると仲間を呼び寄せ、それによって集団を形成しやすい。鳴禽類の場合は同じ種やほかの種の個体同士が「群れ」になって、近くに止まろうとするタカやフクロウを執拗に攻撃して追い払う。

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