日本代表がコートジボワールに勝つ条件 「個人の利益」と「チームの利益」を両立できるか

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才能に恵まれた選手の責任

まだ出場した経験がない選手にとって、とにかく大事なのは勝ち上がることだ。戦術に求めるのは理想ではなく、グループリーグを勝ち抜く堅実さであり、確実性である。南アフリカW杯で多くの選手がそうであったように、格好付けている場合ではない。彼らは「チームの利益」のためにすべてを投げ出す準備ができており、スタイルの追求が「個人の利益」に見えたとしても不思議ではない。

ザックの戦術はひとつだが、それを解釈して実行するときの重心が、前者と後者では微妙に異なっている。

この2つの思いの狭間で、キャプテンの長谷部誠とGK川島永嗣がチームをまとめようとしているのが、現在のザックジャパンの構図ではないだろうか。

ただし、グループリーグを勝ち上がることができれば、この2つのベクトルは自ずと一致するはず……と筆者は見ている。ようはW杯における憧れの度合いが違うにすぎないからだ。ベクトルが一致すれば、スタイルを持っていることがトーナメントにおける最高の拠り所になる。

そのためにも初戦のコートジボワール戦で、好スタートを切ることが不可欠になる。歩み寄るべきは前者だ。仲間を助けるために、本田、遠藤、香川が「チームの利益」を優先する姿を全面に打ち出せば、日本はコートジボワールに勝利できる……と個人的に予想している。

ブラジルには「ピアノを弾く人のために、他の選手がピアノを運ぶ」という表現がある。本来であれば、本田、遠藤、香川という日本が誇る攻撃の才能を輝かせるために、他の選手がサポートするのが理想だ。だが同時に、経験の少ない若手たちを勢いに乗せるのも、才能に恵まれた選手の責任だ。

本田、遠藤、香川の献身に期待したい。

木崎 伸也 スポーツライター

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きざき しんや / Shinya Kizaki

1975年東京都生まれ。中央大学大学院理工学研究科物理学専攻修士課程修了。2002年夏にオランダに移住し、翌年からドイツを拠点に活動。高原直泰や稲本潤一などの日本人選手を中心に、欧州サッカーを取材した。2009年2月に日本に帰国し、『Number』『週刊東洋経済』『週刊サッカーダイジェスト』『サッカー批評』『フットボールサミット』などに寄稿。おもな著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『クライフ哲学ノススメ 試合の流れを読む14の鉄則』(サッカー小僧新書)など。

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