コートジボワールの場合、金銭問題とは別の背景がある。イスラム教が多数派を占める北部と、キリスト教が多数派を占める南部の対立だ。
コートジボワールは1960年にフランスから独立すると、ボワニ大統領の下で「コートジボワールの奇跡」と呼ばれる経済成長を遂げた。しかし1993年にボワニが死去すると、南部出身の大統領候補と北部出身の候補が権力を争い、2002年に内戦状態に突入した。
国連の介入によってようやく2010年に大統領選挙が行なわれたものの、結果を巡って再び混乱に陥り、一時は北部と南部にそれぞれ政権が存在する状態が続いた。2011年、北部のワタラ(現大統領)が南部のバボを拘束して、ようやく権力闘争に決着がついた。
こういう国の混乱と選手の関係が、『サッカー批評』の記事「ドログバが願った内乱の終焉。コートジボワールの平和の象徴となった“エレファンツ”」(文・小川由紀子)に詳しく書かれている。南部出身のドログバとカルー、北部出身のトゥーレ兄弟が代表でともに戦う姿が、南北統一の象徴として政権から期待されているという内容だ。
絶好調ヤヤ・トゥーレのムラっ気
この政治的背景は、コートジボワールに強力な団結を生む可能性もあるが、チーム内に温度差を生む原因にもなりかねない。
キャプテンのドログバは問題ないと思われるが、絶好調のヤヤ・トゥーレがどれだけ「個人の利益」と「チームの利益」を両立させられるかが鍵になるのではないだろうか。ヤヤ・トゥーレは今季マンチェスター・シティで187cmの高さと身体能力を武器に、恐るべき攻撃力を発揮している。パワー、スピード、技術、すべてを併せ持っており、トップ下の位置で暴れ回って1人で組織を破壊できる。
ところが、あまりにも能力が優れているからかムラっ気があり、マンチェスター・シティでも手を抜いているように見える時間帯がある。彼が献身的にプレーするか、独善的にプレーするかで、コートジボワール代表はまったく別のチームになるだろう。日本代表には、90分の中で揺れ動くパフォーマンスの波を見極めながら、ゲームをコントロールすることが求められる。
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