アベノマスクで露呈「無策でもやる」日本の悪癖 「何かせねば精神」が日本人を窮地に追いやる

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こうした失敗は、企業だけではありません。国や自治体の対策にも、冷静な現状認識に基づいているのか、疑問符が付くものがたくさんあります。その代表例が「アベノマスク」です。

政府は、医療現場での医療用マスクの不足が深刻になっていることを受け、3月上旬にアベノマスクを企画しました(発案は経済産業省、計画発表は4月1日)。国民に布製のアベノマスクを配布することで、医療用マスクの使用を減らし、医療現場でのマスク不足を解消するというのが目的でした。

ただ、一般国民の医療用マスクの使用を減らすには、色々な方法がありました。

<医療用マスクの使用を減らす方法>
①アベノマスク
②マスクの輸入再開
③既存マスク業者の増産
④新規業者のマスクビジネス参入
⑤フェイスシールドなど代替品の増産
⑥医療用マスクの購入制限

とくに気になるのが、③および④との比較です。アベノマスクは既存のマスク業者が生産するマスクを配るので、マスクの供給という点で③や④と本質的な違いはありません。違いは、国と特定の業者の間で販売数量と価格が約束されているか(①アベノマスク)、されていないか(③と④)だけです。

アベノマスクの問題点

国が特定の業者に生産委託するのと、自由競争に任せるのでは、どちらが効率的でしょうか。

マスク需要の増大は、③既存業者や、④新規業者にとって格好のビジネスチャンス。早い者勝ちで作って売るほど、利益が得られます。一方、アベノマスクで国と契約した受注業者は販売数量と価格、つまり利益が予めほぼ決められているので、急いで生産する動機も、たくさん生産する動機も、より良いマスクを作って利用する国民の満足度を高めようという動機も高まりません。

結果は、4月以降、既存業者が増産し、シャープを始め多くの企業が短期間で参入し、中国からの輸入が再開し、大量供給でマスク価格が下がりました。結果、アベノマスクは「遅きに失した」「今更もらっても仕方ない」などの不評を買うばかりでした。

アベノマスクの受注業者は、もし契約がなければ、利益を求めてよりスピーディに、よりたくさん生産したことでしょう。契約があったため、受注企業は決められた数をのんびり生産しました。アベノマスクは、マスクの供給量を早期に増やすためには逆効果だったのです。

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