検証!コロナで「父親」の役割はどう変わったか 家庭内における家事育児の不平等はなくなる?

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今では議論を重ねたうえで、必要に応じてお互いの空間やプライバシーを尊重するようになった。「当初は無駄な口論をしていたが、数週間ともに過ごすうちに、同じ家にいながらにしてお互いの空間を整える方法がわかってきた」

これは、ウェイン州立大学ソーシャルワーク学部のキャロリン・デイトン教授が推奨することである。同教授は都市部における父親に焦点を置いた「父親のためのコロナ禍における子育ての手引き」と題した論文でこう提案している。

「子育てを行うパートナーと、日々やらなければならいこと、スケジュール、規律、子育て上のタスクについてオープンに直接話をしよう。誰が何をするか分担する計画を立て、1日の各時間帯における担当を決めておこう」

男性が家事育児時間を増やす「リスク」

多くの父親はより家事や育児に従事する重要性を理解しており、より関わりたいと考えている。が、社会が父親や男性に対して期待するのが家事や育児の担い手ではなく、家庭の稼ぎ頭であるかぎり、これがかなうのは難しい。

国際救助団体、国際救済委員会(IRC)でジェンダー間の平等を担当するシニアディレクター、クリスティン・キム・バート氏によると、女性が仕事に邁進することは「社会進出」とポジティブに向け止められる一方、男性がより長い時間を家事や育児に使うことは「多くにとって社会的な降格とみなされるリスクがある。多くの男性にとってのアイデンティティーはいまだ稼ぎ手であることと結び付きが強い」。

先ごろ、ニューヨーク・タイムズ紙は「パンデミックで変わった父親の責任〜〜はたしてこれは続くか」とする記事を掲載。同記事もアメリカ企業文化、そしてその基となっている社会常識が変わらないかぎり、家庭におけるダイナミクスを変えることはできない、と書いている。

ただし、同記事によれば第2次世界大戦でアメリカの常識や企業文化は劇的に変わった。100年に1度ともいえるパンデミックで、はたして父親の役割は大きく変わるだろうか。

アイネズ・モーバネ・ジョーンズ ライター/編集者(在シアトル)

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Inez Maubane Jones

アメリカ・ワシントン州シアトル在住。子ども向けの書籍「The Content」シリーズを手掛ける傍ら、自身のブログにて教育トレンドや子育て、社会問題などについて執筆している。

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