日本の場合、新型コロナは弱毒性の可能性が高まったにもかかわらず、当初からの強毒性向け対策が維持されていることが大きな問題といえる。結果的に過剰対応の状態になり、新型コロナのリスクの大きさに見合わない損失が発生している。
典型的な損失は膨大な需要不足である。4~6月期の実質GDP(国内総生産)が前期比年率27.8%減となったことが大きなニュースになった。しかし、本当の問題は7月以降の回復力が弱いことだと思う。多くの日次統計から、7月から8月にかけての消費活動が頭打ちになっていることが示されている。このまま活動制限が続くことになれば、消費低迷はそうとう長引くことになるだろう。
現在は政府の支援策によって倒産と失業はそれほど顕在化していないが、いつまでも政府が下支えできるとはかぎらない。売り上げの減少が長期化する可能性が高まれば自主廃業を選択する企業が増えるほか、固定費である人件費にも削減圧力が強まるだろう。倒産と失業が増えると最終需要がさらに減少し、景気が二番底に向かう可能性が高まってくる。
自殺者は2000人程度の増加が懸念される
経済面の副作用だけでなく、人口動態面へのマイナス影響も大きい。以下では、短期的影響として自殺者の増加、長期的影響として「がん」による死亡の増加と少子化を指摘したい。
まず、自殺者については、活動自粛などによって失業が増えることが引き金になる。昨年1年間の自殺者は約2万人であった。原因別にみると、半分を占めるのが健康問題、そしてその次に多いのが経済・生活問題を原因とする自殺者である。失業と明らかな連動性を持つのは、経済・生活問題を原因とする自殺者である。では、足元の景気悪化によって自殺者はどれくらい増えるだろうか。
まず、失業率を予測してみよう。失業率は労働需要と労働供給の関係で決まってくる。注意が必要なのは、景気に左右される労働需要だけでなく、労働供給も考慮する必要があることだ。日本の場合少子高齢化により生産年齢人口が減少しているため、これが恒常的に失業率低下要因として働いている。
そこで、両者を考慮して当面の失業率を推計すると、最大時に4%程度まで上昇するという結果が得られる。足元の需要不足がリーマンショック時をはるかに上回っているにもかかわらず、失業率が当時ほど上昇しないのは、人口減少による人手不足が原因である。
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