ファーウェイとTikTok、中国で評価が異なる訳 トランプ大統領は90日以内の事業売却を指示

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中国人や中国企業、政府にとって、自国の企業がグローバル企業に成長するのは悲願ではあるが、米中対立が先鋭化する中、当事者企業にとっては14億人を抱える中国マーケットこそ、自社の生存を左右する最重要基盤と言える。

バイトダンスより厳しい立場に置かれたファーウェイは、「アメリカにいじめられている」「いじめに屈しない」態度を示し、アフターコロナの経済回復期の中国市場で、利益を拡大している。

市場調査会社カナリスによると、4~6月期のグローバルのスマホ出荷台数では、サムスンを抜いて初めて世界首位に立った。アメリカ政府がWeChatを禁止すれば、中国でのiPhone離れを招き、結果的にファーウェイへの追い風となるという指摘もある。

アメリカ政府と中国消費者の板挟み

バイトダンスはアメリカ企業に事業を切り離すにしても、中国で「アメリカに屈した」印象が広がれば、国内事業でも立場が厳しくなる。アメリカ政府、バイトダンスともに自身の利益とハレーションの大きさを天秤にかけ、水面下ではさまざまな駆け引きとシミュレーションを続けているだろう。

トランプ大統領は、8月14日、バイトダンスにTikTokのアメリカ事業を90日以内に売却するように正式な命令を出した。だが、現在に至るまで、臆測や仮説ばかりが浮上したままだ。WeChatの禁止の中身も、買収協議の詳細も、明らかにされていない。

浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
Twitter: @sanadi37

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