イスラエルとUAE「サプライズ国交樹立」の裏側 これで中東情勢が大きく変化する可能性がある
だが、ことは単純ではない。パレスチナ自治政府は、イスラエルとUAEの合意に反発して大使を召還。パレスチナ紛争の解決に向けては長年、「土地と平和の交換」という原則に基づき、アラブ諸国はイスラエルとの関係正常化の条件として、イスラエルによる占領地の返還や、パレスチナ国家の樹立を暗黙の条件にしてきた。
7月にはイスラエルのネタニヤフ首相がヨルダン川西岸を一部併合しようとしたが、トランプ政権から了承を得られなかったほか、厳しい国際世論を前に断念。UAEは今回、「外交関係の樹立と引き換えに、イスラエルにヨルダン川西岸の併合を思いとどまらせた」と説明し、イスラエルとパレスチナの2国家共存に向けた歩みを阻害する動きではなく、逆に2国家共存への道を救ったと主張している。
だが、今回の件でパレスチナ念願の国家樹立の道が一段と遠のいた可能性がある。パレスチナは、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治政府と、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスによる分断が長期化しており、結束した形でイスラエルと交渉に乗り出す態勢にない。
親イスラエル姿勢が鮮明なトランプ大統領の下、ヨルダン川西岸の一部やガザ地区を領土とし、難民帰還権も放棄させられるような和平案の受け入れを迫られており、政治的に厳しい状況がますます強まりそうだ。ネタニヤフ首相がヨルダン川西岸の併合はまだ俎上にあると、UAEの主張と食い違いを見せているのも気掛かりだ。
イランは本格的に中国同盟に入るか
一方、ペルシャ湾を挟んでイスラエルと直接的に対峙するイランはどうか。経済危機に直面するイランでは、25年間に及ぶ中国との包括的なパートナーシップ協定が論議されており、今後の展開次第では、イランに中国軍最大5000人が駐留するなど本格的に中国の同盟に組み込まれる可能性もある。
イラン・ウオッチャーは「イスラエルとUAEの外交関係樹立は中東地域のパワーバランスを長期的に大きく変え得る一大事であり、イランが座して看過するとは思えない」とイランの動きを警戒する。今後、UAEに続いてサウジやバーレーン、オマーンなどがイスラエルとの国交樹立に向かう可能性もあり、中東は転換点を迎えたと言えそうだ。
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