イスラエルとUAE「サプライズ国交樹立」の裏側 これで中東情勢が大きく変化する可能性がある
アラブ諸国とのビジネスに関わる日本人起業家によると、アラブ諸国は以前からイスラエルの製品や技術を手に入れてきたが、第三国を経由させるなど取引が露見するのを巧みに回避してきた。が、近年はイスラエルとの直接的な取引が増えていたという。
中東地域に駐在する日本の大手商社関係者は外交関係樹立について、「イスラエルの技術と湾岸アラブの資金が結びつくと新たなビジネス・チャンスが生まれる可能性があり、結構なことだと思う」と前向きに評価する。湾岸地域では、サウジに次ぐ経済規模を持つUAEとのビジネスは、イスラエルでも期待が大きい。UAEはすでに戦略的なインフラや石油関連施設の監視や防衛にイスラエル企業が開発したシステムを導入している。
アメリカ大統領選とも無関係ではない
2019年9月にサウジ東部の石油関連施設が、イランが関与したとみられる攻撃を受け、サウジの原油生産量が一時的に半減する大規模な被害が出ている。湾岸諸国にとっては、イランは現実的な脅威であり、イランをにらむ形で、UAEがアメリカ・イスラエル同盟に名実ともに組み込まれることになる。
このタイミングでのイスラエルとUAEの合意は、世界情勢を左右するアメリカの大統領選を3カ月後に控えていることと無関係ではない。各種世論調査結果でトランプ大統領の劣勢が伝えられる中、イスラエルとUAEにとっては、民主党候補のバイデン元副大統領が示す対イラン融和政策を牽制し、トランプ氏を援護する狙いもありそうだ。
イランは欧米の経済制裁や新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けており、アメリカやイスラエルが関与しているとされるサイバー攻撃の疑いにより、中部ナタンツの核施設で謎の爆発が起きるなど核開発は足踏み状態にある。
トランプ氏が再選されれば、イランはこのまま封じ込め政策に苦しめられることになり、イスラエルやUAEは、あわよくば現在のイランのイスラム体制転換との期待も抱いている。
トランプ大統領にとっては、大統領選の好材料になるだけではない。アラブ諸国で初めてイスラエルと和平条約を1979年に締結したエジプトとイスラエルの間を仲介したジミー・カーター元大統領や、パレスチナとの2国家共存に向けた歴史的合意であるオスロ合意(パレスチナ暫定自治宣言)を仲介したり、ヨルダンとイスラエルの平和条約締結を取り持ったりしたビル・クリントン元大統領とともに、中東現代史に和平努力の功績者として名を刻むことになった。ノーベル平和賞に意欲を見せるトランプ大統領も意気揚々だ。
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