イスラエルとUAE「サプライズ国交樹立」の裏側 これで中東情勢が大きく変化する可能性がある

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イスラエルと平和条約を結ぶエジプトやヨルダンの民衆の間では、反イスラエル感情は根強いが、強権的な政権がメディアや世論を操作し、政権は民衆の意思とは無関係に政策を進めている。一方、UAEでは他国ほど反イスラエル感情が強くはないが、世論を抑え込み、「愛情よりも利害優先の結婚」と表現されるイスラエルとの国交樹立に踏み切った形だ。

もっとも、イスラエルとUAEの国交樹立は突然降って湧いたような話ではもちろんない。アラブ諸国の“イスラエル・ボイコット”は形骸化が進み、アラブの春以降の中東での政治情勢の変化により、「アラブの大義」は忘れ去られて湾岸諸国とイスラエルの関係は緊密化。数年前からバーレーンなどが国交樹立に踏み切るのではないかとの観測も流れていた。中東の衛星テレビ局アルジャジーラは「国交樹立は数年前から協議されてきた」と伝えている。

イスラエルの「技術」が目立て?

2018年秋には、イスラエルのネタニヤフ首相が外交関係のないオマーンを訪問したほか、UAEの首都アブダビで開催された柔道の国際大会の「グランドスラム」に、イスラエルのレゲブ文化・スポーツ相が出席し、出場したイスラエルの選手が優勝してイスラエルの国旗掲揚・国歌吹奏も実現した。

レゲブ文化・スポーツ相はUAE柔道連盟幹部の同伴を受けてアブダビの大モスクも訪問。さらに、国連傘下の国際通信連盟がドバイで開催する代表団会議にも、イスラエルが公式に参加している。

こうした表面的な動きとは別に、水面下の動きもここ数年活発化。アラブの強権的な指導者たちは、自国の民衆感情に寄り添って問題に対処するよりも、国民監視を強めることで政権基盤を盤石にする道を選択した。そこで必要とされたのが、イスラエルが持つ国民監視や治安維持の最先端技術だったのだ。

イスラエルにとっても、宿敵であるパレスチナのイスラム組織ハマスやレバノンのシーア派武装組織ヒズボラなどの潜伏先をつぶし、活動家の動向を知るのにアラブ諸国との協力は欠かせない。

2018年にサウジアラビア政府の手によって暗殺されたサウジ人著名ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏の事件でも、イスラエルの企業NSOグループが開発した「ペガサス」というスパイウェアがサウジ政府に販売され、カショギ氏の殺害につながる1つの要因になった可能性がある。

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