「三菱ふそう」がBEVとFCVの2軸で勝負する訳 2039年までにCO2ニュートラルは実現できるか

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さらに2020年4月に発表したボルボとの合弁事業については、「2022年までに、主要な販売地域である欧州、米国および日本での車両ポートフォリオに、電気自動車の量産車を含める予定です。計画されている燃料電池の合弁事業に関するボルボグループとの共通の目標は、2020年代後半までに航続距離がより長い燃料電池車の大型車両を提供することです」とした。

BEVトラックの量産体制をあと2年で構築する(写真:三菱ふそう)

別角度からの質問として、CO2ニュートラル車両が前提となるCO2ニュートラル輸送について伺い、以下のような回答を得た。

「それはCO2に依存しない駆動、つまり電池と水素のみで成立します。ダイムラーではトラックとバスの両車で、電池と水素のテクノロジーを共存させ、相互に補完し合うことができると確信しています。燃料電池は、重負荷および要求の高い長距離向けの環境に配慮した技術であるため、これらの2つのテクノロジーを使用することで、あらかじめルートが決まっている都市内の配送から、事前のルート計画が難しい数日以上にわたる大型貨物の輸送まで、お客様の多様な輸送ニーズのすべてをカバーできます」

また、「最終的に車両のTCO(Total Cost of Ownership/総所有コスト)は、どの技術が、どの目的に適しているかによって決定されます。ダイムラーは今後数年間で、バッテリー電気駆動(BEV)と、水素ベース駆動(F-Cell)の両方に多額の投資を行い、それらを使用して幅広い車両を構築します」とも話す。

2020年代後半の「eCanter F-Cell」に期待

三菱ふそう(ダイムラートラックAG)は、電動小型トラックを含めた商用車全般に対し、BEVとF-Cellの両面から普及を目指す。今回の小型トラックではBEVであるeCanterのパワートレーンをベースにしながら、そこからバッテリー搭載量を減らし、代わりにFCスタックといった動力源によって求められる駆動力を確保する。

2020年6月現在、eCanterは全世界で150台以上を販売、うち40%近くを日本国内で販売した実績がある。続くeCanter F-Cellでは、経済産業省が進める水素インフラ拡充プランとともに2020年代後半の量産化を目標に、販売に向けた車両開発を進めている。

西村 直人 交通コメンテーター

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にしむら なおと / Naoto Nishimura

1972年1月東京都生まれ。WRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員。(協)日本イラストレーション協会(JILLA)監事。★Facebook「交通コメンテーター西村直人の日々

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