政府が旗振りをしての急速なデジタル化が進むマレーシア。
では、コロナ後の“ニューノーマル”において、実際にマレーシアの国民が直面する日常生活での変化とは、どのようなものなのだろうか。
首都クアラルンプールのショッピングモールに入店しようとすると、三脚に設置されたデバイスと小さなサーモグラフィーカメラがじっとこちらを見つめる。傍らで監視している警備員に端末の前で立ち止まれと指示され、画面をのぞき込むと、自分の顔がまず映し出され、「マスクをちゃんとつけていますね」と確認の音声メッセージが流れた。同時に、瞬時に体温が測定され表示される。表示された体温が37.5度以下であれば入店が許可される。
このように、AI技術を活用した「顔認証デバイス」と「高速体温測定システム」などを設置することで、入館者のマスク着用有無や体温チェックなどを迅速化させる試みは至るところで見られる。ちなみに、マスクを着用していないと入店を拒否される店舗などもあり、大型ショッピングモールの入り口では、マスクを忘れた客のためにその場で割安で購入できるようになっている。
また、マレーシア政府は、感染者の追跡調査を確実に遂行させるために、レストランやスーパーマーケットなどの入店前にも、氏名、電話番号、ID番号、入店日時、体温を記録することを求めている。規制は一部緩和されつつあるものの、入店前に毎回それらの情報を記入することはもはや、日常生活における必須行為として浸透している。
QRコード利用が浸透
しかし、それらの記入行為にはペンを使い回しすることでの接触や、いちいち手書きで記入する煩わしさから不満の声も上がり、各レストランや店舗ではQRコードにアクセスして必要情報をスマホから簡単に入力できる独自のシステムを次々に構築。システム構築の金銭的余裕がない小さな飲食店や屋台でさえも、白い紙に印刷した“手作り”のQRコードでデジタル化対応を始めるなど、いかにマレーシア国民の生活にQRコード利用が浸透しているかが浮き彫りとなっている。
(※これまではショッピングモール内の各店舗でもそれぞれ記入が求められたが、モール入り口内のみに簡素化されるなど、感染者数の減少に伴い規制は緩和されつつある)
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