キヤノン、初の赤字が迫る御手洗氏「次の一手」 屋台骨支えるデジカメとオフィスが不振に

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キヤノンは、競合他社と同じくプリントボリュームに応じて課金する従来のビジネスモデルから、文章データ管理やセキュリティー保護などのITサービスを提供して稼ぐビジネスモデルに転換しようとしてきた。在宅勤務が拡大すれば、ITサービスの需要も高まるためだ。

一方、国内でキヤノン製品の販売を担うキヤノンマーケティングジャパンは、プリントボリュームの減少をオフィスでのITサービス事業の拡大により補い、2020年4~6月期に54億円の黒字を確保した。競合であるリコーも、オフィス事業全体では2020年4~6月期に41億円の赤字だったが、ITサービス単体では38億円の黒字を計上した。

祖業のカメラ事業も逆境に

だが、キヤノンのオフィス事業売上高の7割を占める海外向けでは従来ビジネスの落ち込みをカバーするほど、ITサービスを伸ばせなかったとみられる。先述のキヤノン幹部は「(キヤノン本体の)ITサービス事業の開発拠点が国内にあるため、どうしても海外でのサービス展開に遅れが出る」と背景を指摘する。

キヤノンは、欧米で高いシェアを誇るHPのレーザープリンターをOEM供給している。HP分を含めてレーザープリンター市場におけるキヤノンのシェアは世界2位だが、HP製品として販売された先にキヤノンはITサービスを展開できない。その分、ITサービスの展開余地は狭くなっている。

祖業であるカメラビジネスも逆境にある。スマートフォンの普及により、デジカメの総出荷台数は2010年をピークに大きく減少。2019年にはピーク時の8分の1、1500万台まで落ち込んだ。そこにコロナによるイベント中止や外出自粛の影響が重なり、2020年1〜6月の累計出荷台数は前年同期比48.1%減と大きく減少した。

デジカメを含むイメージングシステム事業の売上高は前年同期比3割減の1417億円、営業利益は8億円(前年同期は127億円の黒字)と、かろうじて黒字を確保した。これは、在宅勤務や在宅学習が追い風となり、家庭用インクジェットプリンターが伸びたためで、デジカメの売り上げ台数は半減以下と大きく落ち込んだ。

キヤノンは製品別の損益を公表していないが、「デジカメ事業単体だけをみると大赤字」(業界アナリスト)とみられる。

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