久保建英の「新天地選び」が成功でしかない理由 知られざる会長の財力と日本とのネットワーク

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久保の成長は日本サッカー界にとっても大きなプラスになる(写真:筆者撮影)

そうなれば、1年後に延期された東京五輪でスケールアップした久保の一挙手一投足が見られるだろうし、同年9月からスタート予定の2022年カタールワールドカップ・アジア最終予選でもエース級の働きが期待できる。

日本サッカー協会の反町康治・技術委員長も「将来、日本を背負って立つ選手になってほしい」と語っているように、彼が順調に階段を駆け上がることは、日本サッカー界にとっても大きなプラスになるはずだ。

久保の新天地はどんなクラブなのか

久保のキャリアを大きく左右する、このビジャレアル。もともとの発足は1923年と100年近い歴史を誇っているが、急成長を遂げたのは冒頭の入団会見にも同席していたフェルナンド・ロイグ会長が1997年に経営権を手に入れてからだ。

同氏は、主にタイルなどを取り扱うセラミックメーカーとしてスペイン国内で三指に入る「パメサ・セラミカ」の会長。2020年現在で1600億円の資産を持つ億万長者でもある。

彼がセラミックの主要工場がある町・ビジャレアルのクラブ強化に乗り出し、2000年代以降はスペイン1部に定着。さらには欧州リーグ常連へと導いていったのだ。

ドイツのシャルケやイングランドのマンチェスター・ユナイテッドなど、旧炭鉱町のクラブが労働者階級の支持を受けて飛躍的成長を遂げたように、ビジャレアルも会社ぐるみで大きくなったといっていい。

レアル・マドリード大学院スポーツマネージメントMBAコース日本人唯一の卒業者で、元レアル社員の酒井浩之氏は次のように語る。

「ロイグ家はもともとバレンシア出身の実業家の一族。父親のフランシスコ・ロイグ・バレスター氏(故人)は大規模な農業・畜産業を展開し、大きな成功を収めました。

彼には3人の息子がいて、長男・フランスシコ氏は家業を継ぎ、現在は『ロイグ・コーポレーション・グループ』の社長。その長男も1994〜1997年にバレンシアの会長を務めた経験があって、それが次男のフェルナンド・ロイグ会長のビジャレアル参入の契機になったと見る向きもあります。

そして、三男・フアン氏は巨大スーパーマーケットチェーン『メルカドーナ』の経営者。次男のフェルナンド会長も9%の株を持っているので、協力しながら事業を進めていると思われます。

今年の新型コロナウイルス感染拡大でスペイン国内の経済もダメージを受けましたが、農業や流通関係は基盤がしっかりしている。フェルナンド会長の本業のセラミックのほうは少し影響があるかもしれませんが、ロイグ家としては盤石ですから、ビジャレアルの経営が揺らぐようなことは考えられません」

スペインサッカーの場合、最大のビッグクラブであるバルセロナの年間収入が約1100億円、レアルが約950億〜1000億円で、3番手のアトレチコ・マドリードとセビージャが約700億円。ビジャレアルはこれらを大幅に下回るものの、約160億円で国内では7〜8番手の運営規模だという。

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