「ぼったくりタクシー天国」に今起きている変化

流転タクシー第5回、アプリとコロナの"熱波"

筆者が乗ったタクシーのドライバー、エリック(写真:筆者撮影)

あなたは日本人と韓国人のどちらか?とこちらに確認すると、エリック・ベネリソ(43)は車を走らせた。

「俺がタクシードライバーを始めたのは、5年前。ちょうど英会話学校が続々とセブ島にできていてね。韓国人の留学生や企業がセブ島に続々と進出し、セブにコリアンマネーが流れ込んでいた時期だった。当時から今に至るまで、韓国人を乗せない日がないというくらいだね。

セブはもともと日本人のほうが多いくらいだったけど、今ではすっかり韓国人が多くなった。留学生向けの学校は日本と韓国を合わせて200校近くあるくらいだ。ただ、誤解がないようにいえば、実は俺は韓国人の乗客があまり好きじゃないんだ。

彼らはしつこく値引き交渉してくるし、長距離の移動でオスロブ(ジンベイザメウオッチングができる人気スポット)なんかに行っても、チップも払わない。夜の店ではフィリピン人の女の子との遊び方も汚いし、乗せていてもいい気分じゃない。

俺はもともとミツミ電機の工場で長く働いていたんだ。だから日本人の親切さをよく知っている。日本人のお客さんはウェルカムだよ」

ドライバーの月収は平均の2.5倍

エリックに安定した日系大手企業を辞めた理由を尋ねると、金銭的な問題があったと話す。工場で働いていた当時の月収は約1万5000ペソ(約3万2500円)だった。週7日空港を中心に個人タクシーとして働く現在は、月収は平均的に3万ペソ(約6万5000円)を超えるという。

セブ島のフィリピン人の平均月収が約1万2000ペソ(約2万6000円)程度であることを考えれば、かなりの高所得者に分類される。セブ島において、タクシードライバーは稼げる仕事だ。エリックは続ける。

「12歳と17歳の子どもが2人いてね。奥さんもパートに出ていたけど、学費や食費などがかかって、当時の稼ぎだけだとギリギリの生活だった。この国の政府は教育に関心がないから、子どもの学校のためにお金が必要だったんだ。俺はアルコールが好きだけど、満足にビールも飲めないくらいの生活だったよ。

そこで仕事を辞めて旅行会社に勤める友人から仕事をもらい、観光客をメインとしたドライバー業を始めたわけさ。ほかの国やマニラのことはわからないけど、少なくともセブ島ではやる気さえあればドライバーは稼げる仕事だよ。俺の友人にも月に4万ペソ(約8万6000円)を稼ぐなんてやつもいる。

奥さんも今の仕事に変えてから優しくなったよ(笑)。唯一の不満は、子どもたちと接する時間が減ったことかな。俺は日本語も少し話せるんだ。だから日本人の中には、1日ガイドなんかで声をかけてくれる人もいるよ。そういう時は1日で1万ペソを稼ぐ日もあるんだ」

30分ほどで目的地であるITパーク周辺のホテルに到着した。あれだけしつこく念押しされた交通渋滞には出くわさなかったという皮肉をぶつけてみたが、「そういう日もあるさ」とエリックは意に介す様子はない。

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