本当に強い雑草は「立ち上がらない」という真実 やみくもな根性論を押し付けてはいけない

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もしかすると、一度や二度踏まれたくらいであれば、雑草は立ち上がってくるかも知れない。しかし、何度も踏まれると雑草は立ち上がらなくなる。

「踏まれたら、立ち上がらない」というのが本当の雑草魂なのだ。

雑草にとって、もっとも重要なこと

『「雑草」という戦略 予測不能な時代をどう生き抜くか』(日本実業出版社)
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雑草魂というと、踏まれても踏まれても立ち上がる不屈の魂をイメージするかも知れない。雑草のように頑張ろうと歯を食いしばってきたのに、それでは、あまりに情けないとがっかりするかも知れない。

しかし、本当にそうだろうか。私は、「立ち上がらない雑草魂」こそが、雑草のすごさであると断言できる。

冷静に考えてみてほしい。そもそも、どうして立ち上がらなければならないのだろうか。雑草にとって、もっとも重要なことは何だろうか。

それは、花を咲かせて種子を残すことにある。そうであるとすれば、踏まれても踏まれても立ち上がるというのは、かなり無駄にエネルギーを浪費することである。

そんな余分なことにエネルギーを使うよりも、踏まれながらどうやって花を咲かせるかということの方が大切である。踏まれながらも種子を残すことにエネルギーを注ぐ方が、ずっと合理的である。だから、雑草は立ち上がるような無駄なことはしない。

踏まれている雑草を見ると、踏まれてもダメージが小さくなるように、地面に横たわるようにして生えている。そして、雑草は踏まれながらも、最大限のエネルギーを使って、花を咲かせ、確実に種子を残すのである。

踏まれたら立ち上がらなければいけないというのは、人間の勝手な思い込みではないだろうか。プライドや世間体のために立ち上がろうとしているだけではないだろうか。

踏まれても踏まれても立ち上がるやみくもな根性論よりも、雑草の戦略は、ずっと合理的である。そして、ずっとしたたかで、たくましいのである。

稲垣 栄洋 静岡大学農学部教授

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いながき ひでひろ / Hidehiro Inagaki

1968年静岡市生まれ。岡山大学大学院修了。専門は雑草生態学。農学博士。自称、みちくさ研究家。農林水産省、静岡県農林技術研究所などを経て、現在、静岡大学大学院教授。『身近な雑草の愉快な生きかた』(ちくま文庫)、『都会の雑草、発見と楽しみ方』 (朝日新書)、『雑草に学ぶ「ルデラル」な生き方』(亜紀書房)など著書50冊以上。

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