本当に強い雑草は「立ち上がらない」という真実 やみくもな根性論を押し付けてはいけない

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植物の中でも、雑草は特に「可塑性が大きい」とされている。つまり、変化できる力が大きいのだ。

雑草の変化する能力には、環境によって自分自身を変化させていく「表現的可塑性」と、次の世代に自分と違うタイプを残す「遺伝的多様性」とがある。ここでは、環境に適応して自分自身を変化させる「表現的可塑性」の話をしよう。

私が学生時代に研究していたイチビという雑草は、図鑑では1メートルくらいの大きさと記されている。しかし、5センチくらいの大きさで花を咲かせていることもある。そうかと思えば、飼料用のトウモロコシ畑では、背の高いトウモロコシと競い合って、4メートルを超えるような草丈になっていることもある。まさに大きさは自由自在。可塑性が大きいのだ。

大きさばかりではない。伸び方も自由自在だ。雑草は種類によって、茎を横に伸ばしてテリトリーを広げていく「陣地拡大型戦略」と、そうではなく、上に伸びて自分のテリトリーでの競争力を高めていく「陣地強化型戦略」の二つがあると言われている。新たな陣地へと拡大すべきか、持っている陣地を強化すべきか、ビジネスの場面でも二つの戦略があることだろう。

それでは、そのどちらの戦略が有利なのだろうか。それは、愚問である。どちらの戦略が有利であるかは、状況によって変化する。

そのため、「やっかい」と言われる雑草の戦略が「使い分け型戦略」である。つまり、状況によって戦略を変化させるのだ。

ライバルのいない空き地のような環境では、その雑草は陣地拡大型戦略で横へ横へと茎を伸ばして、テリトリーを広げていく。しかし、ライバルとなる植物が現れると、一転して立ち上がり、競争力を発揮する陣地強化型戦略をとるのである。

大きさも自由自在、伸び方も自由自在。臨機応変に環境に対応して、変化するのである。

誰かが決めた「べき」を捨てる

雑草は、図鑑に記載されたとおりに生えていないことがある。花期は春と書いてあるのに、秋に咲いていることもある。草丈は30センチくらいと書いてあるのに、人間の背丈ほど大きくなっていることもあるし、立ち上がることなく地面を這は っていることもある。まったくつかみどころがないのだ。

また、雑草には「一年生雑草」や「多年生雑草」という分類がある。
芽を出してから一年以内に種子を残して枯れるものが、一年生雑草である。一年生雑草は春に芽を出して秋に種子を残す「一年生夏雑草」と、秋に芽を出して春から夏に種子を残す「一年生冬雑草」(越年生雑草)に分けられる。これに対して、数年以上、生息するものは多年生雑草と呼ばれている。

植物にとって、一年生か多年生かというのは、ごくごく基本的な分類方法である。ところが、雑草の中には、この分類さえ飛び越えて変化してしまうものもある。

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