日本株市場に目を転じると、日々の値動きはアメリカ株に左右されているが、7月末のTOPIXの年初来リターンは10%を超えるマイナスとなり、7月も好調だったアメリカ市場とパフォーンス格差が再び鮮明になった。この結果、TOPIXとS&P500で見た日米相対株価は、7月31日には0.457と3月13日の0.465を下回り、「戦後最低水準」を下回った。
日米価格差の大きな要因とは?
長期的に日米相対株価を見ると、2012年半ばには0.5付近だったが、アベノミクス発動以降の約3年程度は上昇(アメリカ株が日本株をアウトパフォーム)して、2015年後半に約0.8まで高まった。その後、2016年から3年以上日米相対株価の低下が続き、現在の相対株価は安倍政権発動前の水準にすっかり逆戻りしてしまっている。
現在のアメリカ株市場は、いわゆるGAFAM銘柄がバブルの萌芽を彷彿させる上昇により、株式市場全体を牽引している。同様にバブル的な株高をみせる日本の大企業がほとんどないことが、日本株がアメリカ株に引き離され続けている一つの理由である。
そして、より大きな要因は日米の経済政策運営の違いだと、筆者は従来から考えている。先述のように、アメリカでは財政赤字をGDP比20%程度まで拡大させる規模の財政政策を発動して、コロナ禍を戦争同様の非常事態と見なした政策対応が実現している。
安倍政権は、リーマンショック後と比べれば、大規模な現金給付金などの財政政策を発動した。だが、アメリカと比べて規模・スピード共に大きく劣っている。5月末に30兆円規模の第2次補正予算が策定されてからは、これに含まれる予備費の施行を含め政策議論はほとんど進んでいない。
経済活動再開に伴い多くの国がコロナ感染者拡大を経験し、日本も同様の状況に直面している。こうした中で、公衆衛生政策の観点からは時期尚早とも言える「Go to Travelキャンペーン」を巡り対応が混乱している。アメリカ政府と同様に、非常事態との認識を持ち、所得補償政策を徹底することが、公衆衛生政策と経済安定化政策を両立させるために最低限必要な対応だと筆者は考えるが、残念ながら実現しているとは言えない。
日本の政治の世界からは「ポスト安倍」を見据えた動きが頻繁に報道される一方で、経済メディアなどから「コロナ増税」を主張する論者が登場するなど、緊縮財政政策に固執する政治勢力が、今後台頭するリスクが高まっているようにみえる。
さらに、このところのコロナ感染者再拡大によって、持ち直していた個人消費が7月に入ってから再び失速するなど経済停滞が深刻化する兆しが見られる。非常事態が続く中で適切かつ十分な経済政策が実現しなければ、アメリカ対比での日本株のパフォーマンス劣後は今後も続くだろう。
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