米国が不況でも株高なのに日本は冴えないワケ 「日米の相対的な株価格差」は再び「戦後最大」に

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アメリカと同様の規模・スピードで財政政策発動が実現している国は、他にはほとんど見られない。国家を揺るがす非常事態に直面し、覇権国としての地位を保つために同国の政治が機能して、経済正常化を実現させる未曾有の政策が実現しているのかもしれない。

なお、トランプ政権と対峙する民主党の経済政策プランは、政府支出拡大に偏っている面で共和党のプランと異なる部分は多いが、大規模な財政政策発動を前提としている点では共和党政権と似ている。コロナ禍を戦争同様の非常事態として認識する政府の対応が長期化するとの期待がアメリカの金融市場では広まっている。

こうした中で、失業保険給付の週600ドル上乗せが7月末で期限切れとなり、これをカバーする追加財政政策が注目されている。筆者が想定していた通り、共和党、民主党の間での意見相違が大きいため協議が難航、8月に入っても協議が続いている。

9月以降の家計所得も「第2弾」による下支えが濃厚

一方で、7月末に共和党が示した追加財政プランの中に、3000億ドル規模の第2弾現金給付政策が含まれた。

これは、景気回復を重視するトランプ政権が、財政均衡を重視する共和党議員の反対を押し切ったと位置付けられる。失業保険給付の上乗せ政策がどうなるかは依然流動的だが、民主党も賛成すると見られる第2弾の現金給付は、9月以降の家計所得を下支えするだろう。いわゆる「財政の崖」が、アメリカの株式市場の脅威になる可能性は低下したとみられる。

ただ、これだけの財政政策が実現しても、冒頭で述べたように、アメリカの景気回復はスムーズに進んでいない。コロナ感染抑制という公衆衛生政策が不十分なまま経済活動再開を始めた南西部の多くの州では感染拡大が起きて、6月半ばから経済活動に再びブレーキがかかっている。

このアメリカの経験は、大規模な財政支出を繰り出しても、感染防止政策が徹底されなければ経済正常化は実現しないことを示している。また、正体不明のウイルスへの対処として、経済正常化と公衆衛生政策の最適解を見つけるには時間がかかることを意味する。政府による強権発動が容易に行われる中国以外の民主主義体制の多くの国では、試行錯誤が繰り返さざるを得ないのだろう。

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