紺野ぶるまが異色ネタの笑いにとことん拘る訳 大胆な発想で売れない芸人から抜け出した

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そんな真摯な覚悟をして挑んでいた下ネタだったが、事務所の対応は惨憺(さんたん)たるものだった。マネージャーからは

「とうとうヨゴレ決定、おまえ何してんねん!!」

となじられた。

そんな折、伊集院光さんの『伊集院光のてれび』に出演することになった。

伊集院さんは、

「いつも見てるよ」

と言ってくれた。そして、自身のラジオ番組『伊集院光 深夜の馬鹿力』にて下ネタなぞかけについて

「彼女は、むずかしい芸事をやっているね」

と感心しつつ紹介してくれた。

伊集院さんの発言で周りの雰囲気が変わった

「伊集院さんがそう言ってくれたおかげで、周りの雰囲気がガラリと変わりました。『汚れだな』と言ってたマネージャーも、『キモい』と言ってた芸人仲間も、急に手のひらを返して『むずかしい芸事をやってるね』って言ってきました」

その勢いで『下ネタなぞかけ』で突破できるか?と思った『R-1ぐらんぷり』だったが残念ながら2回戦で落ちてしまった。

また困ったことに、下ネタをやっているため、直接的にエロチックな仕事が回ってくるようになった。

経験人数を聞かれたときは、

「それに答えて私になんの得があるんですか?」

と、ハッキリと答えた。しかし逆にそれが高評価で、出演が決定してしまったこともあった。

「私の中では、下ネタとエロって真逆なんです。でもそんなの誰にもわかってもらえませんでした。腰を振るゲームとか、パンツが丸見えになるようなゲームとかやらされて、当時は本当に嫌でした」

ただお笑い芸人としての立場は、苦しみながらではあるものの徐々に上がっていった。

テレビなどの出演も増えた。だが高みに登った分、周りがよく見えるようになった。

「周りを見たら、私って全然ダメじゃん、って気がつきました。満を持して、下ネタをやったのに、ハッキリした結果は出ませんでした。自分の伸びしろだと、今後お笑い芸人で食べていくのは無理だなって思いました。いつまでもバイトしてるわけにはいかないし、両親もいつまで元気かもわからない。生きていくためには、もう芸人をやめなくちゃいけないんだな、と諦めました」

落ち込んで、したたかに酔っぱらい、

「このまま私は芸人をやめるんだな」

と考えていたら、泣けてきた。

そして心から、やめたくないと思った。

「自分には、お笑いがないとダメなんだな、って思いました。そしてもう一度、コントを書くことにしました。

『絶対に、賞レースの決勝に行く』

って決めました」

その頃には芸人1年目に感じていたような幸福感はまったくなくなっていた。根拠のない自信も消え失せていた。

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