基礎的財政収支の黒字化を初めて公式に掲げた小泉純一郎内閣以降、民主党政権を含めて、歴代内閣は基礎的財政収支黒字化の目標を、達成してはいないが堅持し続けてきた。そして、それによって政権の求心力を保ってきた。政権によっては、その改善に不熱心だったりしたが、黒字化目標自体を放棄してはいない。
拙著『平成の経済政策はどう決められたか』(中央公論新社)で経緯について触れたように、基礎的財政収支黒字化の目標達成年次は2011年度、2020年度、2025年度と3度変更されてきた。この黒字化目標を掲げることによって、どの歳出を増やし、どの歳出を減らすかという生殺与奪の権を政権が握る構図がみてとれる。
基礎的財政収支の役割とは
政権運営にとって、予算編成は極めて重要な政策手段である。得た財源をどの政策に振り向けるかが、予算編成の要である。当然ながら、与党議員は自らが望む政策に予算を振り向けるよう要求する。それをすべて認めると、税収だけでは財源が賄えず、国債を増発しなければならなくなる。
すべての予算要求を認めたからといって、政権が高い評価を得られるものではない。むしろ、「何でも鵜呑みにするだらしない内閣」と批判されるだろう。どの要求を認め、どれを認めないか。メリハリ付けができてこそ、政権の実力を内外に見せつけることができる。それが、多くの関係者や国民に納得できるものであればあるほど、政権の評価が高まる。
要求の選別をするには、歳出予算をどの程度増やすかについての歯止めがないといけない。歯止めがないと、要求を受け入れざるを得なくなり、政権として予算編成で実力を見せつけられなくなる。
では、その歯止めをどのように決めるか。その役割を果たしているのが、基礎的財政収支黒字化なのである。基礎的財政収支は、国債残高が際限なく累増しないようにするための指標として意味があり、いつまでにどの程度の収支改善を行うかという進捗管理にも用いられている。
収支改善には、税収等が増えるか、政策的経費を減らすかが必要になる。税収等はそのときの景況次第で変動し、増税でもしない限り政府が自由に増やせない。収支を改善するために、政権がコントロールできるのは、政策的経費である。
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