中長期試算における政策的経費(基礎的財政収支対象経費ともいう)の試算方法は、2021年度以降の歳出改革は未定であるためにまったく行われないと仮定しつつ、名目GDPが増えるにつれて増加するというものだ。2025年度の国の一般会計での政策的経費は、2020年1月試算では86.0兆円だったの対し、7月試算では84.6兆円となっている。
新型コロナの影響で、1人10万円の特別定額給付金や持続化給付金などを支給して歳出が未曽有の規模に膨らんだものの、それは臨時的な対策であって、感染症が収束すれば不要となる。
GDP落ち込みに伴い、税収も減少
加えて、名目GDPが落ち込むことで税収も減ると見込んでいる。2025年度の国の一般会計での税収等は、2020年1月試算では79.1兆円だったの対し、7月試算では76.1兆円となっている。
つまり、2020年度の名目GDPが落ち込んだ後、経済は回復するものの、2025年度の名目GDPは2020年1月試算の約658兆円から、7月試算では約637兆円に落ち込む。これにより、政策的経費も以前の見込みほどには増えないが、税収も増えないため、その差の基礎的財政収支が悪化する構図が浮かび上がってくる。
7月試算では2021年度以降の財政改革は織り込まれておらず、不要不急の政策的経費を追加的に効率化すれば、財政収支は改善できる。他方、医療をはじめ、感染症予防などに追加的な経費が必要になれば、それは追加的な歳出増要因となる。
こうしてみると、基礎的財政収支を2025年度に黒字化するのはかなり厳しい。「この際、基礎的財政収支の黒字化目標を放棄せよ」という声も出ている。しかし、この目標を放棄することは政権基盤を不安定にしてしまいかねない。
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