2019年の株主総会で東芝は、アクティビストファンドからの推薦を含めて外国人取締役を4人、取締役12人のうち10人を社外取締役にする取締役選任議案を提案した。これが支持されて車谷氏への賛成比率は99・43%にも達したが、2020年はアクティビストファンドからの提案にいずれも反対を表明していた。
そのため、総会前には一時、「車谷氏の再任は(再任に必要な過半数である)50%スレスレの攻防になる」(ファンド関係者)との声もあがっていた。
さらに、アメリカの議決権行使助言会社、インスティチューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)とグラスルイスの判断も注目を集めた。機関投資家に影響力のある両社がエフィッシモ側の提案に賛成したり、東芝側の提案に反対すれば、車谷氏の再任が危うくなる可能性があった。
東芝の攻防ラインは「55%」
だが、ISSもグラスルイスも株主総会の約2週間前に、東芝側の提案に賛成し、株主提案に反対する意向を表明。「これで潮目が変わり、ほとんどの機関投資家が東芝側の賛成に回った」(総会関係者)ようだ。
機関投資家はさまざまな企業に長期投資しており、一定の議決権行使ルールや助言会社の意見に沿うのが一般的だ。東芝の大株主5社(エフィッシモ、ファラロン・キャピタル・マネジメント、ハーバード・マネジメント、3D、キングストリート・キャピタル・マネジメント)はアクティビストファンドとされ、経営陣に短期的成果を迫り、投資先企業の株価を上げた後、株式を売却して出ていくのが常套手段で、議決権行使助言会社の判断には左右されないとされる。
大株主5社の議決権比率は合計で33%超とみられ、5社がすべて車谷氏の再任に反対するというのが東芝やファンド関係者の多くの見立てだった。関係者の話を総合すると、東芝は車谷氏への賛成比率として55%を攻防ラインに想定していたようだ。
株主提案もあり、議決権行使率を例年よりやや高めの73%程度と仮定すれば、大株主5社の33%超がすべて反対した場合、反対比率は45%になる。逆にそれ以外の出席株主がすべて車谷氏に賛成すれば、賛成比率は55%になる計算だ。また、エフィッシモの今井氏は5社がすべて賛成すれば、賛成比率は45%になる。
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