金価格はいったいどこまで上昇するのか? 1トロイオンス=2000ドル台はもはや通過点か

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特に、金に対しての価値は著しく低下していることを理解しておく必要がある。米ドルの金に対する価値は、1971年当時を100とすれば、現在では1.9程度になっている。つまり、この50年間で米ドルの価値は金に対して約50分の1になったのである。これがまさに「ドルの減価」である。ドルが大量に発行され、市場に流れ込んでいけば、ドルの価値はさらに棄損することになるだろう。

金はドルの価値が毀損する状況下で買われやすい

そしていま、新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした経済活動の停止による景気悪化を回避するため、米政府は約3兆ドルもの財政出動を行い、国民生活を支える姿勢を明確にした。

現在米議会では、追加的支援策についても議論されており、市場にはさらにドルの供給が増えることになる。また、中央銀行に関しても、企業の資金調達を支えるため、大量の国債や社債の買い入れを実施し、企業の資金繰りと株価を支えている。それに加え、企業への直接融資も実施するなど、過去に例を見ない規模と方法で経済を支えようとしている。

つまりドルの供給量は今後も増える一方であり、当然のように価値は低下しそうだ。一方で米連邦準備制度理事会(FRB)は2022年まで金利を引き上げないとのスタンスを明確にし、経済が不安定化すれば追加的な措置をとるとしている。

こうした環境下ではドルの価値は今後も棄損するしかない。今後も、もし景気が回復する局面に入れば、利上げをして資金供給を絞りたいところだが、株価が下がるとアメリカ経済に大きな影響を与えるが崩れかねない。そのため利上げもしにくく、資金供給の規模を縮小することもそう簡単ではない。こうして見ていくと、もはやアメリカ「半永久的に」引き締め政策ができなくなったといえるかもしれない。

こうした状況を理解している世界の投資家は、金を継続的に買っている。世界最大の金上場投資信託(ETF)である「SPDRゴールド・トラスト」の保有残高は、7月28日に1243.12トンまで積み上がった。これは、2013年3月以来の高水準だ。

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