大半の人が騙される「不動産」不都合なカラクリ 業界を知り尽くすプロたちが明かす現実

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深谷:ただ、私も不動産業界の人間として、囲い込みや両手仲介(※2)などの裏側にある事情もわからなくはないんです。実は、みなさんが想像する以上に不動産会社の経営は厳しい。大手さんでも苦戦しているのが実状です。

【注】※2両手仲介
売買の依頼を受け、相手方をほかの不動産会社を介さずに見つけ、依頼元と相手方の両方から仲介手数料をもらうこと

夏原:バブル期のように、午前中に買った土地を午後に売って数千万円の儲けなんて時代ではありませんからね。

深谷:ええ。もちろん消費者置き去りの両手仲介という行為を、私はいいと言っているわけでは決してありません。両手取引は禁止している国も多いですし、今の日本の状況は、言うならば交通事故の加害者と被害者の間に1人の弁護士が入って解決するようなものですからね。

夏原:まさに利益相反。ルールを変えていかないといけませんね。

深谷:さらに現在の不動産屋のビジネスモデルは、成功報酬という側面があります。どれだけ時間や労力をかけても、商談がまとまらなければ1円にもならない。「これだけやったのだから元は取らないと……」となってしまう土壌がそもそもあるんです。

われわれ消費者の意識改革も必要

夏原:確かに賃貸の場合でも、何件物件を紹介して内見しても、決まらなければ報酬は発生しません。それでは、「今日、決めましょう!」となって当然。弁護士に支払う着手金のように、例えば先に5000円支払うことで何件でも内見できるというような料金システムが必要でしょうね。

深谷:そのとおりだと思います。

夏原:深谷さんは、以前から消費者の目線に立ち、今おっしゃった「両手仲介の禁止」だけでなく、「仲介手数料の自由化」「レインズ(※3)の一般開放」などの必要性も提案されていますよね。

【注】※3レインズ
「Real Estate Information Network System」の略。公益法人・不動産流通機構が運営する不動産物件情報のネットワークシステム。レインズを利用できるのは、指定流通機構に会員登録をしている不動産会社だけ

深谷:はい。宅建業法で仲介手数料の上限は“3%+6万円”と決まっています。もちろん法律ができた当時は、消費者を守るために上限を決めなければいけなかったのでしょう。しかし現在、仲介手数料の上限があることで、「できるだけ儲けを出すために両手を目指さないと」と、逆に消費者の首を絞めることになってしまっています。

今の時代、仲介手数料を自由化して、もし暴利をむさぼる不動産業者が生まれたとしても消費者は見抜きます。消費者をもっと信頼して、仲介手数料を自由化すべきだと思いますね。

夏原武(なつはら たけし)/作家、漫画原作者。1959年生まれ。裏社会などをテーマにノンフィクションを執筆。著書に『バブル』など。漫画原作作品に、『正直不動産』のほか、ドラマ化・映画化され小学館漫画賞を受賞した『クロサギ』『任侠転生-異世界のヤクザ姫-』など多数

夏原:上限が設けてあるがゆえに仲介手数料と呼ばず、アドバイス料、コンサルタント料……名前だけ変えるなど、どうにか抜け穴、抜け道を探して稼ごうとする業者がはびこっているわけですからね。顧客が満足するサービスを提供すれば、仲介手数料が5%でも客は来ます。反対に雑なサービスであれば、手数料がいくら安かろうと客は来ませんからね。

ただ、同時にわれわれ消費者の意識改革も必要です。完全に政府の失策ですが、長くデフレ社会が続いたことで、国民の多くは物の値段、サービスの対価、手数料などは下がるものだという意識が働いている。値段が上がるという発想がないのは怖いことです。安さが何より優先では未来がない。物価が上がらなければ給料も上がりませんからね。

深谷:おっしゃるとおりです。

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