「スカパー!」トップが語る会員数歯止めの戦略 動画配信の攻勢受け、巣ごもり需要見られず

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――会員数減少に歯止めをかけるために必要なことは何ですか。

ブンデスリーガは5年間、日本での中継権を得た。実はそれだけではない。今年は難しいだろうが、2021年以降に、例えばシーズンオフにブンデスリーガのチームが日本に来るときにその興行に絡むみたいなことを考えている。会員の方を対象に、「スカパー!ツアー」みたいなものを企画して、普通の観客席だけではなく、(フィールドに)もっと近づいたところで交流ができるといったようなイメージだ。

よねくら・えいいち/1957年生まれ、東京都出身。1981年慶應義塾大学卒業後、伊藤忠商事入社。同社専務執行役員などを経て、2018年6月スカパーJSATホールディングス副社長に就任。2019年4月より現職(撮影:尾形文繁)

また、すでに動いているのはスタジアムやアリーナに出資をしていくことだ。今いろんな地方でちょっとしたアリーナの話があるが、そういうところに絡んでいく。そして、そこで音楽ライブやスポーツイベントなど興行に絡んで、衛星を使って中継していくこともありだろう。

こうした取り組みで、会員数が300万、400万にはならなくても、価値のあるサービスだと感じてもらい、(会員数を)安定させたいと考えている。単純にスカパーチャンネルを見て、「こういうことやっています」というのでは限界がある。

――WOWOWなど衛星放送の競合他社では、BーCASカードと呼ばれる番号やアンテナがなくても、ネットだけで加入できるプランを作る計画を公表している会社もあります。

具体的にこれという言い方は、時間軸で言い切れないが、(スカパー!でも今後出していく可能性は)あると思う。動画配信サービスへの食いつきは大きい。ブンデスリーガなどは、オンデマンドだけの商品も出している。

今後のカギを握る「コラボ」

――現在、宇宙事業の営業収益の3割を衛星放送の利用が占めています。動画配信に移行すると、業績に影響が出る可能性もあり、完全な移行は難しいのでは。

今はそうだ。ただ、5年後、10年後はわからない。

――スカパー!にチャンネルを持つ一部の事業者が、Amazonプライムビデオのような動画配信に乗り出しています。何百チャンネルもある多様性もスカパー!の魅力の1つだと思いますが、そうしたものが失われる可能性はありませんか。

その通りだ。だから、1つのキーはOTT(動画配信)のような世界で、コラボ、異業種連携、同業との連携だと思っている。今年のみならずだが、人・モノ・金、もう一度、人と事業と会社の中身を総点検して見直さなければならない。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

すでに(プライムビデオに一部チャンネルを提供するなど)Amazonとは協業している。ほかにも、スカパー!ではプロ野球で全球団の放送をやっているが、広島東洋カープの主催試合はスカパー!しかやっていなくて、できない事業者もあるので、そことコラボすることもできる。

(動画配信以外にも)極端な話だが、物販を手がける事業者とのコラボもあるかもしれない。防災チャンネルなどを作り、民間セキュリティーや防災なども考えられる。そうした連携で10万でも、15万でもそれで少しずつ会員が増えていけばいい。「やっぱり(スカパー!って)便利だよね」と感じていただけるはずだ。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では、「宇宙事業の成長策」「宇宙事業とメディア事業の融合」などについても語っている。
井上 昌也 東洋経済 記者

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いのうえ まさや / Masaya Inoue

慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大メディア・コミュニケーション研究所修了。2019年東洋経済新報社に入社。現在はテレビ業界や動画配信、エンタメなどを担当。趣味は演劇鑑賞、スポーツ観戦。

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