踏まれるほど強くなる「雑草」の凄すぎる生き様 逆境の中で合理的に生きるオオバコの生態

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オオバコは、道ばたやグラウンドなど、よく踏まれるところに生えている。まるで踏まれやすいところを好んでいるかのようだ。

じつは、オオバコの種子は、紙おむつに似た化学構造のゼリー状の物質を持っていて、雨が降って水に濡れると膨張してネバネバする性質がある。その粘着物質で人間の靴や、自動車のタイヤにくっついて運ばれていくのである。

オオバコの種子が持つ粘着物質は、もともと乾燥などから種子を保護するためのものであると考えられている。しかし結果的に、この粘着物質が機能して、オオバコは分布を広げていったのである。

舗装されていない道路では、どこまでも、轍(わだち)に沿ってオオバコが生えているのをよく見かける。オオバコは学名を「プランターゴ」と言う。これはラテン語で、「足の裏で運ぶ」という意味である。また、漢名では「車前草」と書く。これも道に沿ってどこまでも生えていることに由来している。道に沿ってたくさん生えているのは、人や車がオオバコの種子を運んでいるからなのだ。

こうなると、オオバコにとって踏まれることは、耐えることでも、克服すべきことでもない。踏まれることによって、分布を広げて成功するのだから、踏まれなければ困ってしまう。もはや、すべてのオオバコは、「踏んでほしい」と願っているはずだ。

こうして、踏まれなければ困るほどまでに、踏まれることを利用しているのである。まさに逆境をプラスに変えて成功しているのだ。

踏まれなければ成功できない

植物にとって「踏まれる」ということは、けっして良いことではない。
踏まれることなく、何の障害もなく、成長することができれば、存分に育つことができるし、踏まれることさえなければ、何のストレスもなく過ごすことができるだろう。

多くの植物にとって、踏まれることは、耐えるべきことであり、克服しなければならない障害である。

しかし、オオバコは踏まれることを嫌がるどころか耐えるどころか、その逆境を利用して成功した。

もし、オオバコが踏まれなかったとしたら、オオバコはどうなるのだろう。

オオバコは踏まれなければ、種子を散布することができない。いや、それだけではない。踏まれることがなければ、さまざまな雑草が、その土地に侵入してくる。オオバコは、踏まれることに対しては特別な強さを発揮するが、他の雑草との競争には、からきし弱い。誰も踏まない場所では、オオバコは他の植物に圧倒されて、やがては消え去ってしまう。

よく踏まれるような場所では、何しろ競争が起こりにくい。踏まれながら生きることに精一杯で、競争などしている余裕はないのだ。

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