社員47人の出版社が100万部超を連発できる訳 サンマーク出版・植木社長が語るヒットの裏側
一方で、日本でヒットした作品を海外に売り込むことに力を入れ、先行投資してきたことが、弊社の強みとなりました。最初の成功例は2001年に日本で出版した『水は答えを知っている』(江本勝 著)でした。翌年にドイツで、2004年にはアメリカでの発行が実現し、アメリカではシリーズ47万部、その後、中国で140万部、韓国で26万部などと膨らみ、35カ国・地域で累計300万部のヒットとなりました。
そして、『人生がときめく片づけの魔法』へと続きます。アメリカでは2015年にアマゾンの年間総合2位という日本の出版界にとっては金字塔を打ち立てました。アメリカでは近藤さんの「kondo」が「こんまり流で片づける」という意味の動詞で使われるという社会現象まで起こりました。弊社の作品の海外発行版は延べ1000タイトル、発行部数の総計は2500万部を超えています。
もちろん、簡単ではありません。欧米の編集者に日本語を読める人はほぼ皆無ですから、ぜひとも売りたいという本は、自前で訳して売り込まなければなりません。翻訳のクオリティーも重要です。しかし、そういう努力もあって、この7~8年で海外販売が弊社の大きな収入源に育ちました。
仕事は人生の砥石
――植木さんは編集者から出発し、2002年に創業者から経営を引き継ぎ社長に就任されました。編集者の仕事と経営は畑が違うようにも思いますが、編集者としての経験が経営者としての仕事に役に立ちましたか。
もちろんです。編集者というのは、つくづく恵まれた仕事だと思います。京セラの創業者の稲盛和夫先生は「仕事は人生の砥石である」とおっしゃいましたが、編集者は勉強が仕事のような希有な仕事で、まさに仕事によって人生を研いでもらいました。例えば、仕事を介して稲盛先生のような方から直接薫陶を受けることができるわけです。
しかも、ちょっとお会いするのではなく、編集者と著者という関係で長時間席を同じくして慧眼に触れることができるんです。それだけではなく、お会いする前には、あるいは企画を持ち込む前には、その人の書いたものや書かれたものはすべて読んで頭に入れておかなければなりません。著書だけではなく新聞記事や会報などすべてです。必然的に勉強になります。経営者の方に本を書いていただいたことも少なくありません。
編集者時代には経営者になることなど考えたことも願ったこともありませんでしたが、門前の小僧ではありませんが、知らぬうちに編集者として名だたる経営者の方々から経営マインドを吸収していたことは大きな力になっていると思います。
(後編へ続く)
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