社員47人の出版社が100万部超を連発できる訳 サンマーク出版・植木社長が語るヒットの裏側

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最近気づいたことなのですが、2017年の5月に出版し、年末にミリオンセラーを達成した佐久間健一さんの『モデルが秘密にしたがる体幹リセットダイエット』も、実はそういう本でした。編集担当である当時、入社3年目の蓮見美帆と著者の佐久間さんが企画段階から出版直後の広報戦略まで、限界を超えたエネルギーを注ぎましたが、ヒットの理由はそれだけではありません。

僕はダイエットの本だから体の本だと思っていたのですが、さにあらず、でした。体幹リセットダイエットが紹介する方法でダイエットすることで、読者は今まで「できなかった自分」が「できる自分」になったことを発見し、それによって「自分は変われるんだ」とマインドがチェンジするんです。

それが自信になって行動も変わってくる。まさに、読者を変える本になっていた、ということだったと思うんです。そういう本なら、電子でも買っていただけるし、海を越えて広がっていく可能性もあると思います。

どんな仕事でも「思いの強い人」が勝つ

――著者のタイトル『思うことから、すべては始まる』は、著者向けにも、編集者や出版関係者に向けた言葉にも聞こえます。

それは、著者や編集者を含め出版に関わるすべての人、ひいては業界を問わず、何かを成し遂げたいと思う、すべての人へのメッセージです。

どんな仕事をされていても、思いが強い人というのは最高のものを目指します。結果として最高の地点にたどり着くかどうかは別として、少なくともそれを目指しているということが、いろんなものを生み出していく、そういう要素があるのだと思います。

例えば、42言語で翻訳され、2015年のアメリカを皮切りに多くの国でヒットとなり、世界累計で1200万部に到達した『人生がときめく片づけの魔法』の近藤麻理恵さんがそうです。近藤さんは4歳のときに片づけに目覚め、家中のものを片づけてお母さんに叱られたそうです。20歳をすぎる頃には、アルバイトで片づけのコンサルタントのようなことをされていました。

「20歳そこそこの娘に何が……」と思う人もいたかもしれませんが、実はキャリアは15年以上あって、それに没頭してきたからこそ、常人ではたどり着けない領域に達しておられました。「片づけ」という狭い分野でも、とても深い。それこそ、読者の行動を変えるような新しいバリューがあるわけです。

何かを極めることは、ほかのことにも通じていきます。そこで説得力も増していく。とても面白いことですが、ジャンルは違ってもトップを極めた方同士で対談していただくと、初対面でも旧知の仲であるかのように、話がぴったりかみ合って盛り上がっていくというようなことがよくあります。

それぞれが専門の領域で、ほかの人には目に見えないものが見える領域までたどり着いていらっしゃるからだと思います。その共通の要素で結び付いているから、話題に事欠くことがないのです。

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