社員47人の出版社が100万部超を連発できる訳 サンマーク出版・植木社長が語るヒットの裏側
そのときに、編集者の目線としては、読者の人生や悩み苦しみに寄り添って、読者の心をノックするコンテンツになっているかどうかが大切です。そして、そのことに対して著者と徹底的に議論し、時には闘うことも必要です。著者の中には、とくに高名な方の中には、読者目線が希薄な人が少なくありません。そこで、著者の本然は尊重しつつ、読者が求めていることを、議論を通じて繰り返し伝えなければなりません。
拙著に「真理はひらがな」とも書きましたが、読者に届くためには「易しさ」も非常に大切です。
「一流の人は難しいことを易しく伝える。二流の人は難しいことを難しく伝える。三流の人は易しいことを難しく伝える」と、僕はよく言っているんですが、易しく伝えるというのは非常に本質的なことで、その難しさを乗り越えられないものは、本物ではないと思います。本物の方々は、どなたも易しい言葉で伝えることができます。ですから、その部分でも、編集者は著者と闘わなければいけません。
伸びていくものをちょっと押す広告戦略
――サンマーク出版は新聞広告や中吊り広告、電車内広告など、強力な広告展開も特徴のように見えます。
そう見えるようですね。ですがもちろん、すべての書籍を同じように資材を投入してプロモーションしているわけではありません。拙著でも触れましたが、基本的に「ソフト産業というのは多産多死」です。千三(せんみつ)と言われています。「千冊作って三つ売れる」という意味です。
その現状を考えると、幸運にもヒットの芽があるものが出版できたのであれば、そこに集中投下してプロモーションして育てていくことが、ソフト産業の特性を生かすことだという思いはあります。
ある種の割り切りですが、駄目なものは押しても引いても駄目なんです。それは出版してみなければわかりません。ところが、伸びていくものはちょっと押してあげるだけでものすごい伸び方をします。それがソフト産業の特徴です。
ですから、どんな小さな動きでも「ヒットの芽」の兆候を見逃さないという意識で、新刊既刊を問わず、売れ行きには目を皿にしています。僕は「本は生き物だ」と言っていますが、本当に生き物のように成長することがあるんです。その成長の手助けをするのがプロモーションだと思っています。
――サンマーク出版の本は海外でも大ヒットを飛ばしていますが、日本の出版社では珍しいことです。
日本の出版社と海外の関わりは、欧米を中心とする海外の本の著作権を買い付けて日本語版を発行するという「買い」が大半です。もちろん、弊社でもそれにも力を入れ、『神との対話』(ニール・ドナルド・ウォルシュ 著)シリーズや『小さいことにくよくよするな!』(リチャード・カールソン 著)などのメガヒットにも恵まれました。