「脱自民党政治」の貫徹以外に道なし

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「脱自民党政治」の貫徹以外に道なし

塩田潮

 1月23日に小沢民主党幹事長に対する検察の事情聴取が実施され、24日には普天間基地問題が焦点の沖縄県名護市長選で辺野古移設反対派の候補が当選した。鳩山政権は「政治とカネ」、日米関係の2つの爆弾を抱え、自爆・自滅の危機に直面しているように映る。

 19日発表の共同通信の世論調査では、ついに内閣不支持率(44.1%)が支持率(41.5%)を上回った。まだ危険水域ではないが、国民の間には政権交代への期待派と失望派が相半ばする状況となった。期待派は政権交代に何に期待し、失望派は何に失望したのか。
 「支持」の理由は「政治改革に期待」(26.6%)、「不支持」は「首相に指導力がない」(29.0%)がトップだ。国民が望んだのは、一言でいえば「脱自民党政治」だろう。民主党は結党以来、「永田町的政治風土と自民党的政党文化の克服」が旗印であった。官僚支配、政・官・業の癒着、従属的な日米関係、不透明な「政治とカネ」が自民党政治のベースで、これらを一掃する「脱自民党政治」への期待が政権交代実現のエネルギーとなった。いま鳩山政権が問われているのはその年来の主張と覚悟は本物かどうかである。

 振り返ると、7年前に小沢自由党が民主党に合流する際、「異物混入」という声も噴出した。「永田町的、自民党的」な要素を色濃く残したグループだったからだ。一方で小沢幹事長が長く「自民党政治」からの転換を唱えてきたのも事実である。
 だが、いま問題になっているのは「永田町的、自民党的」な体質と構造だ。民主党政権は結党以来の「脱自民党政治」に果敢に挑戦しているかどうか、もう一つ、民主党が「内なる自民党化」という誘惑や危険とどう闘っているか、そこが試されている。鳩山首相、小沢幹事長を含め、民主党を担う人たちはもう一度、結党の原点に立ち戻らなければ、政権は自爆・自滅の道をたどるだろう。
 首相の指導力不足克服は「脱自民党政治」の貫徹以外に方策はない。
(写真:今井康一)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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