美人モデルの魂がデブ弁護士の体に入ったら デブハラ注意! 見た目重視の風潮にもの申す

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「恋や仕事に頑張る女子」系の浅い作品ではない

実は筆者は、「恋や仕事に頑張る女子のための応援歌!」といったキャッチコピーがつきそうな、この手の作品は苦手だ(ちなみにいい大人を指して“女子”と連呼するのも好きじゃない)。よって最初は乗り気でなかった本作だったが、女性の知性と美貌の相関関係や、なんだかんだ言って男性は女性の外見を重視するのか、はたまた中身なのかといった問題を、あまりにも直球で問いかける内容に、なかなかヘビーな題材だなと興味を引かれた。

まず、この設定はファンタジーではあるが、かなりぐさりとくるものだ。デビーの魂がジェーンに乗り移り、初めて鏡に映った自分の姿を見たとき、ジェーン(以下、中身はデビー)はギャーッ!と悲鳴を上げる。太っていることにショックを受けてだ(なんというストレートな差別!)。足を見ては「足首が懐かしい」とため息をつき、ジェーンのクローゼットに並ぶクローバーサイズ(大きいサイズ)の洋服に心底、失望する。

何しろ生前のデビーは容姿に絶対的な自信を持っており、そのことを見せびらかし、おしゃれと見た目に命をかける女性だったのだから無理もない。つまり、初期設定のデビーは、清々しいまでに浅はかなブロンド美人の典型なのだ(デビーにはデビーのよさがあることはきちんと描かれていくのだが)。

「ブロンド美女=頭は空っぽ」の典型イメージは、いまだにアメリカのエンタメシーンにおいて根強いものがある。それはデビーの親友役ステイシーを見てもわかる。とても美しいモデルだが、「ビキニって大好き!」と自分の見た目に無邪気にウキウキしちゃうタイプ。おバカであることはもはやネタだが、まったく卑屈になったりしないところがデビーに劣らず清々しくて憎めない。

こういうエンタメでは主に脇役でありがちな、能天気美女キャラクターを見ていると、正直、弁舌鮮やかな高学歴の才媛よりも、気のいい美人のほうがややこしくないし、おっかなくもなくて好ましいなあと、ついオッサンのような気持ちになる(一瞬だけど)。

で、そのデビーの魂が乗り移ったジェーンは、以前のようにちょっといい男を見ると愛嬌たっぷりにウィンクしたり、男性の視線を意識してお尻をプリプリさせながら歩いたりする。その姿が笑いを誘うのだが、おデブを笑い者にするといった嫌な感じはない。

アメドラ(アメリカのドラマ)におけるデブのキャラクターといえば、これまではオタクや笑いを提供するコミック・リリーフ(滑稽な登場人物)であった。近年は、おデブのカップルを主人公にしたコメディ『Mike & Molly』が人気番組としてシーズンを重ねているが、本作のようにヒロインとして物語を牽引するということは、まれだ。これはひとつには、演じるブルック・エリオット(舞台でも活躍する実力派)がすばらしく芸達者でチャーミングであることが大きいだろう。

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