東芝への株主提案で窮地に立つ経産省の「憂鬱」 改正外為法、エフィッシモはどうかわすのか

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改正外為法では、「外国投資家自らまたはその関係者が、指定業種に属する事業を営む会社の取締役または監査役の選任に係る議案について、株主総会において同意しようとする」行為が事前審査の対象の1つとなっている。

外国投資家が自ら、またはほかのものを通じて株主総会に提出した議案の場合、ここでいう関係者に「外国投資家の役員等や、外国投資家と主要な取引関係にある法人等の役員等が含まれる」とされており、今井氏がこれに該当してしまうというわけだ。

経産省は時間を引き延ばし?

では、なぜ今井氏が該当したことで経産省が追い込まれるのか。あるファンド関係者は次のように解説する。

「事前審査において経産省がノーと言った場合、民間企業の意思決定、しかも安全保障とはなんら関係ないことにまで国が関与することになり、そんな国に外国投資家は投資しなくなってしまう。とはいえ、経産省主導で改正した外為法の第1号案件で判断しなければ、何のために改正したのかと問われることにもなりかねない。つまり、経産省は進むも地獄、退くも地獄というわけだ」

こうした事態に対し、経産省は「個別案件には答えられない」としながらも、一般論として「要件に該当するのであればしっかりと審査し判断する」としている。だが、エフィッシモの提案から時間が経過し、株主総会の期日が迫ってきているにもかかわらず、いまだ判断は示されていない。

「経産省としてはできれば判断を下したくなく、エフィッシモに提案を取り下げてほしいというのが正直なところ。そのため、手続き上の細かい点などを指摘して時間を延ばし、エフィッシモが諦めるのを待っているのではないか」(事情に詳しいファンド関係者)という指摘もある。

そもそも今回の外為法改正に当たっては、当初から外国投資家を中心に「日本企業の統治改革を求めるアクティビスト潰しなのか」といった批判が根強かった。だが当時、中国のファーウェイを念頭に欧米諸国が外為法にあたる法律の大幅な強化に乗り出し、「日本だけ取り残されるわけにはいかない」(政府関係者)との危機感があった。そこで、一定の条件を満たせば事前届け出を免除する仕組みなどを導入して理解を求め、ある意味強引に成立させたという背景があった。

こうした国の姿勢に対し、エフィッシモはあえて今井氏を取締役候補に含めて真っ向勝負を挑み、引くに引けない状況だ。事前審査を受けたり、経産省の審査をクリアしなければエフィッシモは今井氏の選任議案に賛成できないことが分かっていながら、あえて茨の道を選んだことからも、その意思の強さは見て取れる。

とはいえ株主総会まで残された時間は10日間。どこで落とし所をつけるのか。関係者の視線は経産省に集まっている。

田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。

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