8人の大混戦となるWTO次期トップ選挙の行方

韓国も立候補するが日本は人材が乏しく傍観

米中対立、デジタル経済への対応など課題山積の中、次期WTO事務局長選が本格化している(写真:ロイター)
世界貿易機関(WTO)のロベルト・アゼベド事務局長が5月16日に突然、退任を発表。離任は8月末が予定されているが、その後任選びでWTOが揺れている。極めて短期間での選出の行方が注目されている。
WTOは多くの懸案、難問を抱えたままだ。WTOルールを無視した米中貿易戦争は終息の気配が依然としてみられず、アメリカが反発しているため貿易問題を実質的に討議する上級委員会は機能停止に陥っている。これだけではない。デジタル貿易の拡大や漁業補助金といった新しいルール作り、機構・組織の活性化など、WTO自身の改革も待ったなしだ。難局の中の事務局長選について上智大学法学部の川瀬剛志教授に聞いた。

保護貿易主義の傾向が強まる中での事務局長選

――今回のWTO事務局長選出について、7月8日に立候補が締め切られましたが、8人が届け出を出しています。まず、WTO事務局長の役割について教えてください。

1995年にWTOが発足して以来、これまで6人が事務局長を歴任しました。任期は4年ですが、初代のサザーランド氏は1993年からGATT最後の事務局長としてWTOへの移行業務を終えて、わずか4カ月で退任。またムーア、スパチャイ氏もともに3年で退任しました。これは1999年の選挙で加盟国間の力関係がぶつかり合って調整がつかず、3年任期とすることで折り合った結果です。

事務局長の任務については、WTO設立協定6条2項に「閣僚会議は(略)事務局長の権限、任務を定める規則を採択する」としかなく、詳しく定められたものはありません。実際の業務については、日常的な組織運営に加え、WTOの顔としての情報発信や交渉における加盟国間の利害調整など多岐にわたります。

例えばアゼベド事務局長も、2013年の貿易円滑化協定の合意に際しては妥協案のとりまとめに重要な役割を果たしました。最近でも、コロナ禍を背景に各国が取る保護貿易主義的な措置の監視体制を強化することに指導力を発揮しました。

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