「劇場公開か配信か」で揺れる映画界のジレンマ 配信優先の作品が増えれば映画界は自滅する

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さらに東宝の配給作品からは、その後も『コンフィデンスマンJP プリンセス編』(7月23日公開)や『映画ドラえもん のび太の新恐竜』(8月7日公開)といった期待作が控えている。コロナの感染拡大は予断を許さない状況だが、こうした強力新作の公開をきっかけに少しでも映画界に明るい話題が生まれることを期待したい。

7月23日公開の『コンフィデンスマンJP プリンセス編』。『MOTHER マザー』と同様、長澤まさみが主演 ©2020「コンフィデンスマンJP」製作委員会

中長期的には「劇場公開と配信のバランス」がテーマになるだろう。

単館系では、配信のみのリリースや劇場公開と同時配信となる作品がこれからもでてくると思われる。しかし、大手映画会社の製作による大規模公開作品は、劇場での集客力、収益力が配信よりも段違いに大きいため、これからも劇場先行で公開されていくに違いない。こうした状況からは、作品ごとのウインドー(劇場、配信、パッケージなどの順序)の変化と、作品規模による収益構造の2極化がより進んでいくことが予想される。

観客にとっては、映画館での鑑賞は、大スクリーンと多層的な音響システムによる圧倒的な迫力と臨場感を、体験として楽しむことができる。反対に配信には、外出せずとも自宅でいつでも好きなときに楽しめる利便性があり、それぞれのメリットがある。

映画館を廃れさせない道の模索を

ハリウッドアクション大作や重厚な人間ドラマといった作品のジャンルやタイプ、そして、人それぞれの映画の捉え方や好みによって、その楽しみ方はアフターコロナ、ウィズコロナの世界ではよりはっきりと分かれていくかもしれない。

劇場と配信の議論は昔からあるが、そもそも映画の楽しみ方として二者択一ではない。作品によって観客が選ぶことができる選択肢としてより一般的になっていき、それが映画ファンの裾野を広げていくことにもつながる。

ただ映画館での鑑賞は、配信では得られぬ付加価値のある体験であることも事実。お出かけやデートの目的地としていまだに必要な場でもある。コロナの終息後は、これまでの自粛生活の反動から、「コト消費」が盛り返していくことが予想されるが、映画館での鑑賞もそのひとつに数えられるだろう。

映画ビジネスはまだまだ映画館の興行がメインだ。現状の緊急避難的な配信シフトに頼るだけはなく、映画館を廃れさせない道を業界全体で模索してくことが、映画の未来のためにも必要なことといえるだろう。

武井 保之 ライター

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たけい・やすゆき / Takei Yasuyuki

日本およびハリウッドの映画シーン、動画配信サービスの動向など映像メディアとコンテンツのトレンドを主に執筆。エンタテインメントビジネスのほか、映画、テレビドラマ、バラエティ、お笑い、音楽などに関するスタッフ、演者への取材・執筆も行う。韓国ドラマ・映画・K-POPなど韓国コンテンツにも注目している。音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク系専門誌などの編集者を経て、フリーランスとして活動中。

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