「劇場公開か配信か」で揺れる映画界のジレンマ 配信優先の作品が増えれば映画界は自滅する
緊急事態宣言の解除後、6月に入って全国で順次オープンした映画館。それから1カ月ほどが経つが、「感染防止対策のための収容定員数の削減」と「観客のコロナウイルスへの拭えない不安感」という2つの大きなマイナス要因から、映画界は厳しい状況を強いられている。
特に劇場を運営する興行サイドは壊滅的な状況だ。東宝によると、約700スクリーンあるTOHOシネマズの6月の興行収入(売上高に相当)は前年比13.5%の9.7億円。5月の5.9億円(前年比0.9%)から増加しているものの、回復にはほど遠い状況だ。
劇場側にとっては、観客を呼び込める新作を望む声が強いが、映画配給会社、映画製作会社にとってはリスクが高く公開に対して慎重な向きもある。そこで、コロナ禍での映画界の状況と、議論が巻き起こっている「劇場公開か? 配信か?」の正解について考えていきたい。
劇場公開断念し配信に切り替える新作相次ぐ
コロナ禍で全国の映画館が一斉にクローズした4~5月の間、劇場公開できなくなった新作は、公開を未定のままにしている作品もあるが、公開する場合は主に以下の3つの対応がとられている。①「上映中の映画の配信を前倒ししてスタート」、②「公開延期、公開時期のメドが立たない映画の配信のみのリリース」、そして③「映画館再開後、劇場と配信の同時公開」だ。
作品ごとに見ていくと、緊急事態宣言の前から上映していた『白い暴動』や『Fukushima50』は、映画館の休業で興行がたち行かなくなり、4月17日より配信をスタートさせている。
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