ガバナンスの欠如を重視した厚生労働省は、女子医大の特定機能病院の指定を取り消した。外来患者数が急減した女子医大は、一気に赤字経営へと転落したのである。
特定機能病院の指定は2007年に再承認されたが、2014年に再び重大な死亡事故が発覚する。
2014年、女子医大のICU(集中治療室)で治療中の2歳児が、プロポフォールという鎮静薬を大量投与され、3日後に死亡した。プロポフォールは、ICUで人工呼吸中の子どもに使用を禁止されていたことから、女子医大の管理責任が問われた。
さらに女子医大では、ほかに63人の子どもにもプロポフォールを投与、そのうち12人が投与後3年以内に死亡していたことが明らかになる(女子医大側は、投与と死亡の因果関係を否定)。
この問題をめぐって、女子医大の理事長と学長の内部対立をさらけ出し、遺族への対応のまずさも目立った。
「女子医大は2度死んだ」と、勤務する医師が嘆くほど、2つの事故によって、かつての栄光は地に堕ちたのである。
厚生労働省は、改めて女子医大の特定機能病院の承認を取り消した。外来患者の減少と評価の高い看板医師の流出が起こり、女子医大は3期連続の赤字に逆戻りする。経営立て直しのために、人件費の抑制が行われ、職員のボーナスは、2013年から2016年までの3年間で、最大123万円も減額された(労働組合調べ)。このとき、労務担当理事として大なたを振るったのが、去年から理事長に就任している岩本絹子氏である。
「岩本氏は、東京・江戸川区の産婦人科クリニックで院長をしていましたが、創業者一族として女子医大の運営に乗り出してきました。厳しい人で、書類を投げつけるときもあるそうです。誰も意見できない雰囲気で、まるで独裁者だと揶揄する職員もいます」(女子医大関係者)
人件費切り詰めの一方で施設整備に巨額費用投下
岩本理事長に対する女子医大職員の反発は大きい。それは、ボーナスカットなど強引に人件費を切り詰める一方で、総額1000億円と言われる、莫大な資金を投入して、大学施設の建て替えや移転などの再整備を進めているからだ。
極めつきは、今年2月に完成した新校舎の改修工事である。職員によると、6億2000万円をかけて、新たに理事長室などを設置しているという。
「赤字だったら理事長室にかけるお金もないはず。コロナに便乗して、本当はもらえるはずのお金を経営に回しているだけ。職員を駒扱いにして働かせるだけ働かせて、報酬なしなんてありえません」(30代・看護師)」
「理事諸室の工事さえ始めさえしなければ、億単位の無駄遣いは減らせたと思います」(20代女性)※労働組合に寄せられた投稿より
学内では、岩本理事長の強気な大学運営を可能にしているのは、自民党との強いパイプだと言われている。
批判を浴びている新校舎の竣工式には、二階俊博幹事長が駆けつけた。ちなみに、二階氏の母親は女子医大出身の医師だったという。
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