思考力が高まる!「難解な専門書」を読むコツ 「似て非なる概念」を整理しながら読む

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数多くの本を読めば読むほど、読む速度が自然と速くなりますが、これは、こうした頻出度の高い法則が「既知情報」になって、その部分のショートカットができるようになることも1つの要因です。

「概念」の正確な整理が思考力向上の最短ルート

読書で「思考力」を高めるためには、本に書かれている「概念」を正確に整理することがいちばんの近道だとわたしは思います。

よくいわれることですが、とくに「似て非なる概念」を押さえると、その専門分野の基本事項は理解することができるようになります。

例えば、法学であれば、わたしも大学1年生の受講生に対して前期の「法学入門」という授業でお話しするのですが、「無効」と「取消し」という概念は、法がその行為に効果を与えないという点では共通するため「似ている概念」です。

しかし、法の分野では、両者は異なるもので、「無効」は、いつでも、誰からでも主張できるもので、無効なものには最初から法は効果を与えません。

これに対し、「取消し」の場合は、主張できる人が限られ、主張できる期限も限られることになり、そのような取消権者が取消期間内に主張をして、はじめてその行為は効力を失うものとされています。この点で、「非なる概念」といえます。

また、大学法学部の税法の授業でよくお話しするのは、「所得税とは『個人が得た所得』に対する税金で、法人税とは『法人が得た所得』に対する税金です」ということです。

そして、「『所得』とは、利益のことで、わかりやすくいえば『儲け』のことです。収入ではありません。あくまで、収入から経費を引いた残額である利益に対して、所得税は課されます」という説明をしていきます。

この「所得」という所得税における利益を指す概念は、法人税でも「所得」であり同じ概念を使っているのですが、所得税の所得は「収入-経費」で計算するのに対し、法人税の所得は「益金−損金」で計算します。そして、法人の所得を計算する際に用いられるのは企業会計なのですが、会計上の利益は「収益−費用」で計算します。

これらは、同じ「利益」の計算である点で「似ている概念」です。しかし、税金の場合と会計の場合とでは概念が少し異なります。

なぜかというと、前者(税金)が公平な税負担を考えなければならないのに対し、後者(会計)は株主や投資家に経営成績を報告しなければならないという目的に違いがあるからです。こうした理由から、「非なる概念」になっています。

このように「似て非なる概念」は、まずは「似ている部分」、つまり共通点を探し、そのうえで「非なる」部分、つまり相違点を明らかにします。そして、最後に「なぜ、相違するのか?」を考えるとよいでしょう。共通点、相違点、その理由です。

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