思考力が高まる!「難解な専門書」を読むコツ 「似て非なる概念」を整理しながら読む

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こうした点について丁寧な説明をした入門書もありますが、説明が省略されている本もあります。専門性が高くなるほど、省略されることが多いので注意が必要です。専門性が高い本(専門書)の場合、基礎部分は知っていることを前提に書かれているからです。

しかし、そうした本を読んでいるあなたには「よくわからない」ということもあると思います。その場合には、読みながら登場する言葉(概念)に注意を払いましょう。そして、少しでも意味がわからないと思った言葉、あるいは前に出てきた言葉と似ていると思った言葉を見つけたら、その言葉の意味を調べるようにしましょう。

森信茂樹の『デジタル経済と税』(日本経済新聞出版社)という本に、「日本は、2015年10月から、国境を越えて行う電子書籍・音楽・広告の配信などのサービスを提供する国外事業者を登録させ納税させる制度を導入して、消費税を課すことが可能になりました」という説明があります。その後に、その経緯が書かれているのですが、最後に「しかし、法人(所得)税については、そのような対応は行われていません」と締められています。

この「法人(所得)税」については、先ほど述べたとおり、「法人が得た所得に対する税」が「法人税」です。つまり、法人税のことを指しているだけなのです。ところが、「(所得)」と入れられているのは、専門的見地からすると、「消費」に対する税金と、「所得」に対する税金を、税の性質としては分けて考える思考があるのです。

著者の森信茂樹は、おそらく、所得に対する税金である点を強調したくて、法人税にあえて「(所得)」を入れたのでしょう。

わからない専門用語は放置しない

このような専門性の高い本を読む場合には、本を読む際に言葉の意味を調べたり、確認したりしたほうがいい場合があります。少し面倒だと思われるかもしれませんが、高度な思考力を手に入れて、興味のある分野のことを深く知ろうと思ったら、基本概念の正確な理解が必要です。ぜひ、恐れることなく、専門性が高い本にトライしてみてください。

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わたしもそうなのですが、自分の知らない分野を初めて学ぶときは、さまざまな恐れを感じるものです。また、難しくて素人の自分には理解できない(ついていけない)のではないかと不安に思うものです。でも、よく使われている言葉の意味を正確に調べて理解していくと、意外と簡単に意味がわかってくるものです。

わたし自身が、法律の中でも難解といわれる税法を独学で学ぶことができたのも、そういうことを一つひとつ丁寧にやってきたからです。立ち止まって面倒がらずに言葉の意味を調べてみましょう。そうした「心がけひとつで、世界は変わる」と思います。

専門性の高い本を読むときのポイントとしては、本の余白に、概念の図を書いてしまうとよいと思います。似たような概念を並べて、どう違うのかを簡単に説明する図を書くのもありですが、単に概念を並べて書いておくだけでも、「似て非なる概念」であることを認識することができます。

また、単純な図でも、説明されている文章があるページの余白に書いておけば、意味のある図になり、記憶に留まりやすくなるでしょう。

木山 泰嗣 青山学院大学法学部教授(税法)

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きやま ひろつぐ / Hirotsugu Kiyama

1974年横浜生まれ。上智大学法学部法律学科を卒業後、2001年に旧司法試験に合格し、2003年に弁護士登録(第二東京弁護士会)。2015年4月から現職(大学教員に転身し、教育及び研究に専念)。著書に、『小説で読む民事訴訟法』(法学書院)、『憲法がしゃべった。』(すばる舎)、『反論する技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがあり、単著の合計は本書で58冊。

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