「ファーウェイ」業績好転の先に立ちこめる暗雲 アメリカの追加制裁の影響はまだこれから

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ファーウェイが発表した2020年上半期の業績は予想を上回る急回復を見せた(写真:ファーウェイのウェブサイトより)

7月13日、中国の通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)が2020年上半期(1~6月期)の業績をひっそりと発表した。同社は非上場企業だが、四半期ごとに決算を開示してアナリストやメディア向けの説明会を開いてきた。しかし今回はウェブサイトにリリースを出しただけで、質疑応答の機会は設けなかった。

とはいえ、開示された業績は予想を上回るものだった。上半期の売上高は前年同期比13.1%増の4540億元(約6兆9462億円)、純利益は同19.6%増の417億6800万元(約6391億円)を記録した。

ファーウェイが4月21日に開示した1~3月期の売上高は1822億元(約2兆7877億円)と前年同期比1.4%の増加にとどまり、純利益は133億元(約2035億円)と同7.5%減少していた。これを元に4~6月期の業績を計算すると、売上高は2718億元(約4兆1585億円)と前年同期比22.65%増加、純利益は285億元(約4361億円)と同38.6%増加したことになる。4月以降のビジネスの急回復が浮かび上がった。

事業分野別の上半期の実績は、5G(第5世代移動通信)基地局など通信事業者向け業務の売上高が前年同期比8.94%増の1596億元(約2兆4419億円)、サーバーなどエンタープライズ向け業務が同14.87%増の363億元(約5554億円)、携帯端末などコンシューマー向け事業が同15.85%増の2558億元(約3兆9137億円)に達した。

封じられた5G基地局向けチップの衝撃

だが、今後の業績を占ううえで最大の懸念材料が、アメリカ商務省が5月15日に発動した対ファーウェイの追加制裁の影響だ。半導体の受託製造を行うファウンドリが、ファーウェイや子会社の海思半導体(ハイシリコン)が設計した製品を生産する場合、その過程でアメリカ由来の技術を利用する際にはアメリカ国外での生産を含めて商務省の許可が求められる。

市場調査会社のカウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチの報告書によれば、ファーウェイは自社設計の半導体の製造をファウンドリ世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)に大きく依存している。

例えば5Gスマートフォン向けプロセッサーの「麒麟1020」は、TSMCが持つ世界最先端の5nm(ナノメートル)のプロセス技術で製造されている。5G基地局向けチップ「天罡」やサーバー向けチップ「鯤鵬」にも、同じくTSMCの7nmのプロセス技術が使われている。

本記事は「財新」の提供記事です

アメリカの追加制裁を受け、TSMCはすでにファーウェイからの新規受注を停止した。その衝撃が最も深刻とみられているのが5G基地局向けの半導体だ。ファーウェイの5G基地局はもともとアメリカ製の半導体を多数搭載していたが、同社はこれを自社設計のチップに置き換えていくもくろみだった。それが封じられた今、ファーウェイははたして長期的な解決策を見いだせるのか、業界関係者は固唾をのんで見守っている。

(財新記者:張而弛)
※原文の配信は7月14日

財新 Biz&Tech

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