26歳アイドル「あの日、私を襲った事故」の真実 猪狩ともか「突然、看板が倒れ、下敷きに…」
その日は、全国各地でニュースになるほど風が強い日でした。電車を降りていつも通る道。新曲をイヤホンで聴きながら「今日は風がすごいな」と思いながらも、頭の中は振り付けのことや翌日の大阪での仕事のことでいっぱいでした。
1年ちょっと前に仮面女子の正規メンバーになったばかりの私は、仕事が楽しくて充実していて、毎日がキラキラと輝いていました。
急に強い突風が吹いて、左手の看板がガタガタ鳴っているのが、なんとなく目の端に入りました。その次の瞬間、私は看板の下敷きになっていました。
ありえない、凶器のような重さ
一瞬のことでした。看板が倒れてくるとき「あっ、ヤバイ!」と思いましたが、キャリーケースを持っていたし、とっさに逃げることはできませんでした。逃げようとして逃げられるほどの時間もなかったと思います。
看板の下にうつぶせの状態で倒れて、視界も遮られた状態。自分の身に何が起こっているのかわかりませんでした。
そして痛みを感じることよりも、看板が重たくて、苦しくて苦しくて……。息ができない。経験したことのない、ありえない、凶器のような重さでした。
「これは自分ひとりではどうにもできない、助けを呼ばなければ」と思いました。少し先に飛んでいたスマホが視界に入り、手を伸ばして取ろうとしたけど届かない。
「助けて……!」とても大きな声を出せる状態ではなかったけれど、精一杯の力で助けを呼びました。
「ああ、明日大阪なのにどうしよう」「整体とダンスレッスン、不参加の電話をしないと……」下敷きになりながらも、頭の中では仕事のことが心配でした。
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