大阪のオフィス市場、漂う「坪4万円」への暗雲 「大空室時代」のトラウマが賃料上昇の壁に

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潮目が変わったのは2017年ごろからだ。グランフロントがようやく満床となり、朝日新聞の不動産子会社が同年3月に竣工させた「中之島フェスティバルタワー・ウエスト」(延べ床面積約15.1万平方メートル)も、終盤はやや苦戦しつつも満床にこぎつけた。

2018年に南海電鉄が供給した「なんばスカイオ」(延べ床面積約8.4万平方メートル)はその年唯一の大型供給となったが、難波エリア一帯の賃料相場が坪1万円台にとどまる中、供給不足を追い風におよそ坪2.5万円という高水準で成約した。

同年には景気低迷を受けて延期となっていた旧大阪中央郵便局跡地の再開発が始動。野村不動産や住友商事などのオフィスビル開発計画も立ち上がった。2019年にはいよいよ大型供給がゼロとなり、大阪地盤のダイビルや京阪神ビルディングでは、保有するオフィスビルの空室率が0%になった。需給がひっ迫し、既存ビルでもようやく賃料引き上げに向けて動き出した矢先にコロナが直撃した。

オフィス移転を見合わせる企業も

現時点では、空室率が急増するような事態には発展していない。「大阪は営業拠点として活用する企業が多い。リモートワークが普及しても営業の場は残すのでは」(地元デベロッパー)との声もある。ただ、高い賃料を追求しづらくなったことは確かだ。

企業業績が伸び盛りだった時代は、増床や拡張移転といった需要が支えていた。足元ではリモートワークの導入余地を見極め、移転を見合わせるテナントも出てきた。大型供給に需要が追いつくかは見通せない。

オフィス開発がようやく花開こうとしていた大阪にとって、コロナは出鼻をくじきかねない出来事だ。大阪市内でのオフィス供給の山場は、大阪梅田ツインタワーズ・サウスが竣工する2022年にまず訪れる。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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