その上司の言葉、「思考停止ワード」です 意味があるようで中身がない、”魔法の”言葉たち

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「確かに、課長は『理屈を言うな。オレの言うとおりやれ』ってタイプなんですよ」

吉岡「そういう人は、自分のやり方にこだわるから、理詰めで迫る別のスタイルは認めたくない。もっと泥臭いやり方でないとわからないし、評価もしない……。意外に、単純なことかもしれないね」

「あまりムキにならず、聞き流しておけばよかったという気がしてきました」

マジック・ワードを振りかざす上司との付き合い方

吉岡「世間では、コミュニケーション能力というと、『英語・情報メディアを操り、世界と交渉できる。流行に敏感だが流されず果敢にチャレンジ。周囲の気持ちを察して引くときには引ける』みたいなことを言うけど……」

「そんなビジネス・パーソンなら、どこの課でもスターになりますね。きっと、人事部は仕事がなくなって困りますね(笑)。……あれ?」

吉岡「ははは、そう、そんな人はいるわけがないから『人事部』が必要になる。慎重な人は決断に時間がかかる、決断が早い人はおっちょこちょい。このように、人間の長所と欠陥は裏腹だし、どんな人も『完璧な能力』なんて持てない。だから、適材適所という操作も必要になる」

「いいとこ取りする言葉は、必然的に意味がなくなるわけですね。ボクも管理職になったら、気をつけなくっちゃいけませんね」

吉岡「逆に言うと『コミュニケーション能力がない』と言われても、おびえることはない。実際、あなたが言いかけたように、そういう言葉を連発する人のコミュニケーション能力のほうがむしろ問題なのです。ただ、気をつけるべきは、そういう言葉で何か別のことを言おうとしている場合でしょうか。そこはくみ取ってあげたほうが、部下として親切でしょうね」

「課長の言いたかったのは『もっとオレを手本にしてくれ』ということだったのかもしれないですね」

吉岡「自分と同じやり方をしてくれないので、寂しかったのかもしれません。でも、そういう人も『こういうことだけはしない』お手本としての意味があるわけですよ」 

どうでしょう、皆さんにもこんなことは心当たりがあるのでは? ビジネス・シーンでは、ちょっとした言葉のやり取りが大きな誤解を生みます。やみくもに他人の言葉に反応するばかりでなく、言葉や表現の定義や背景をきちんと考えれば、人に言いたいことをきちんと伝えられるし、人間関係も余裕を持って対応できる。それが、ビジネス・パーソンの心構えではないでしょうか。

※次回記事は、5月7日(水)に公開予定です


 

吉岡 友治 VOCABOW小論術校長

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よしおか ゆうじ / Yoshioka Yuji

VOCABOW小論術校長。仙台市生まれ。東京大学文学部社会学科卒。シカゴ大学大学院人文学科修了。専攻は演劇と文学理論。駿台予備学校・代々木ゼミ ナールで20年にわたり国語・小論文の講師を務めた。日本語における小論文メソッドを確立し、ロースクールやMBA志望者に論文指導を行う一方、各地の 学校・企業・コンサルタントを対象に、論理的表現の研修も行っている。明晰な文章分析メソッドを適用し、社会論や芸術論、マジック・ワード論などの分野 で活動している。

『だまされない〈議論力〉』(講談社現代新書)、『いい文章には型がある』(PHP新書)、『必ずわかる!○○主義事典』(PHP文 庫)、『東大入試に学ぶロジカルライティング』(ちくま新書)、『社会人入試の小論文 思考のメソッドとまとめ方』(実務教育出版)など著書多数。最近で は、インドネシア・バリ島にも仕事場を持ち、東京とバリとを往復するプチ・ノマド的な活動を展開している。

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