人のふりみて「言語力」アップ

プロゴルファー/小林浩美

 今年はサッカーのワールドカップが開催される。ある番組で興味深いことを放送していた。その中で、これまで日本のサッカーが世界でなかなか勝てない理由の一つとして、「言語力」というのを挙げていた。それは「選手同士の試合中のコミュニケーション」、あるいは「自分の考えを試合中の短い時間で的確に伝える能力」が、ほかの強い国に比べて足りないことを指すらしい。これは日本サッカー協会が分析した結果だ。この「言語力」がアップするとプレーの質が上がるそうだ。またその「言語力」の問題はサッカーに限らず、今の若者世代に共通する問題だとも指摘していた。

私にも心当たりがある。米ツアーに参戦して2年目あたりから、試合のエントリーや、ホテルの予約、飛行機の便変更手続きなど、日常で必要なことは何でも自分でやれるように仕向けていた。日本にいるのと同様に何でも自分でできる状態にしなければ、ゴルフで自分の力を発揮できないと感じたからだ。

そう決めたもののまず自分から話す勇気が必要だ。そのうえ自分の発音できちんと相手に伝わるのだろうか、話す言葉は正しいだろうかとつねに心配が先立つ。事前に話す内容を日本語から英語に直して何回も練習してから話しかける。話していて気づいたことは、同じ内容を相手に伝えるのでも英語圏の人が話すと説明が短いのにとてもわかりやすいことが多いこと。それならと皆が話す言葉をそのまま使ってみた。まねして話してみるとどこでどういう風に言葉を使い、どの順序で説明をしたらわかりやすいかが何となくのみ込めてきた。また、まねているうちに「こういう風に考えるからこの言葉や言い方をするのだな」と、米国人の考え方も理解できるようになってきた。
 米国では学校でディベートの授業があり、日頃から話し方を訓練されている。また、多民族で構成されているので、個人個人の考えが違って当たり前。はっきり自分の考えを相手に伝えなくてはいけない文化が背景にある。

いまやグローバル時代。諸外国の人たちとの接触が多くなり、論理的にわかりやすく物事を説明するのが、どの分野でも欠かせない能力になっている。また忙しい社会では一つのことに対する持ち時間も少ない。ゴルフでも国の内外を問わず、インタビューや取材などで短い時間に自分の言葉で気持ちを明確に伝えることは重要だ。またプレーでいい成績を出すのにも似たようなことが言える。外国の試合に行って勝つためには、勝てる人のやり方をまずまねてみることだ。プレーや練習の仕方だけではなく、話す内容も考え方もまずまねてみる。まねているうちに自分にはないことをいろいろ感じる。そうやってまねていると、次第に自分のものになっていく。
 言葉と行動は、密接に関係していると思うのだ。

プロゴルファー/小林浩美(こばやし・ひろみ)
1963年福島県生まれ。89年にプロ初優勝と年間6勝を挙げ、90年から米ツアーに参戦、4勝を挙げる。欧州ツアー1勝を含め通算15勝。現在、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)理事。TV解説やコースセッティングなど、幅広く活躍中。所属/日立グループ。
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