コロナ後「モメない職場」がますます危うい理由 「生産性」と「幸福感」を両立させる方法

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ピョートル:組織というのはやっぱり人でしょう。ただ、エンゲージメントとかヒューマンリソースとか、そういう外資系の言葉を使ったとたん、人じゃなくてモノにしか見えなくなるんです。

日系の会社は、昔はいい意味で「村」でした。そこでは、メンバーの個人的な感情も含めて、いわゆる帰属意識が保たれていた。人が人として見られていたわけです。ところが、アメリカ型の機能偏重の組織をまねする中で、そういういい面を失ってしまって、しかも、欧米的な仕組みの導入も中途半端で、モンスターだけが生き残っているという非常にまずい状態です。そこを乗り越えて、メンバーが夢中になって幸せに働いているかどうかなど、根本的な個人の満足度や幸福度に注目する企業文化を組織の中に持ち込まないと、いいチームビルディングはできないと思います。

なぜ「わがまま」を言い合うことが重要なのか

青野:幸福度というのは、言い換えると、個人の欲望=わがままが満たされているかどうかという問題ですよね。情報公開・情報共有が徹底された会社では、わがままがどんどん出てくるようになります。それをどうやって実現していくかが、まさにチームワークの核心ということになるでしょうね。

ピョートル:メンバーは、リーダーが自分を人として見てくれているんだということを実感できたら、ちゃんと頑張ってくれるんです。だから、わがままを含めて「本気でその人を見る」ということがとても大事。研修で学んだようなマネジメント手法を使って、こういう言葉で誘惑したら、こういうふうに動いてくれるということではなくて、「この人はどんな人で、どんな思いで働いていて、どんな気持ちが湧いていて、なんでここにいるんだろう」ということをしっかり考えて、それをコーチング的、ファシリテーション的に伝える。要するに、チームの中でわがままを言い合うことがチームビルディングにはとても大事なんです。

青野:ただし、必ずもめる(笑)。サイボウズの中でもつねにもめています。でも、それはクリエイティブな瞬間でもあるんです。そこから新しいアイデアがどんどん出てくる。「こうやりなさい」と言って決めてしまうと、それ以上のアイデアは出てきません。

ピョートル:私の会社には思考のダイバーシティーを重視して入ってもらっているので、メンバーは必ずしもイエスマン・イエスウーマンたちではないんですね。新しいアイデアを出すために、わざと価値観の異なる、面倒くさい会話が起きるチームをつくっていると言ってもいいでしょう。

でも、日本企業は相変わらずイエスマン・イエスウーマンを採っています。だから、面倒くさい会話が起きない。その代わり、いいアイデアも発生しないという悪循環に陥っているのでなないでしょうか。

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